研究課題/領域番号 |
20H04310
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
竹川 暢之 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00324369)
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研究分担者 |
三澤 健太郎 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (10431991)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境分析 / 難揮発性エアロゾル / 質量分析計 / 熱脱離 / オンライン分析 |
研究実績の概要 |
エアロゾルの直接・間接効果は気候変動予測において重要である。本研究では、レーザー脱離型エアロゾル質量分析計を構築し、難揮発性成分を含む硫酸塩・有機エアロゾル濃度のオンライン定量法を確立することを目的としている。 本研究で開発する難揮発性エアロゾル質量分析計 (rTDMS) は、空気力学レンズにより粒子をビーム状に真空中に導入し、グラファイト捕集体に粒子を捕集する。捕集体にレーザーを照射して粒子成分を気化し、脱離ガス成分を電子イオン化質量分析計で検出する。予備実験の結果から、装置のプロトタイプでは粒子捕集効率と加熱効率に課題があることが分かっていた。本研究において粒子捕集効率と加熱効率を向上させるために、くりこみ型構造を有するグラファイト粒子捕集体を新たに開発した。炭酸ガスレーザーをレンズで集光して照射することで、放射温度として900℃以上を達成した。固体の硫酸塩粒子に対する捕集効率を評価するために、硫酸塩粒子をオレイン酸の蒸気に通すことで液体被覆を生成した。液体粒子の捕集効率を100%と仮定した場合、固体粒子の捕集効率として70%程度以上を達成できることが分かった。 レーザー照射強度を調整し、かつ適切なイオン信号を組み合わせることで、複数の硫酸塩化学種が混合した粒子の分類定量方法の開発を行った。硫酸ナトリウムと硫酸カリウムでは、硫酸由来のm/z 48 (SO) 信号がほぼ重なって検出されるため、m/z 23 (Na) やm/z 39 (K) 等を適切に組み合わせて、両者を分離する方法を考案した。複数の硫酸塩を含む溶液から混合粒子を生成して装置の性能評価を行ったところ、複数成分混合粒子のイオン信号は概ね単一成分粒子の線形結合で表されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、新規粒子捕集部の試作および評価実験、信号分離法の検討、研究成果取りまとめが当初予定通りに進まなかった。このため、実験用消耗品の購入や技術補助員 (臨時職員) の雇用に遅れが生じた。その対策として、相応分の研究経費を繰り越して翌年度に上記研究内容を実施した。以上より、総合的に見てやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実大気連続観測に向けて、硫酸塩・硝酸塩等の無機エアロゾルおよび有機エアロゾルを揮発性に応じて分類定量するための方法を開発する。また、真空制御、粒子捕集、回転導入端子調整、レーザー照射、信号取得を自動化するためのハードウェアを構築する。さらに、粒子捕集・分析の自動制御および信号取得のソフトウェアを新たに構築し、早期に全体システムを完成させることを目指す。
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