研究課題/領域番号 |
20H04312
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
熊田 英峰 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (60318194)
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研究分担者 |
内田 昌男 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主幹研究員 (50344289)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブラックカーボン / 放射性炭素 / 加速器質量分析計(AMS) / 極微量14C分析 / 永久凍土 / ステロール / リン脂質脂肪酸 |
研究実績の概要 |
1.試料採取:2023年1月に,アラスカ中央部(Smith lake: SL20130327 PC3,コア長180cm)とブルックス山脈南側(Grayling lake: GL20130325,コア長30cm)で採取したコアサンプル2本を輸入した.この試料を金沢大日本海域環境センターのGe検出器にて210Pb・137Csの予備計測を行い,年代データを得た.GLは6.5-7.0, 12.0-12.5, 15.0-15.5 cmの3層準を計測,210Pb_exから堆積速度が0.111cm/yと計算され,30cmのコアが約270年に相当することがわかった.SLは表層1-2cmのみ結果を得た. 2.BC-14Cに関する実験:輸入した試料について,バイオマーカー分析,BC分析など前処理実験の準備作業を開始した. 3.BCプロファイルの燃焼履歴指標としての有用性評価:コロナ禍による渡航制限等の影響で,アラスカツンドラ域のサンプル入手が遅れたため,北極海スピッツベルゲン島の氷河後退域で採取した土壌試料(アーカイブ)からBCを分離し,14Cを測定した.土壌中14C-BC値は7.8±2.8 pMCと,ほぼ化石炭素の値であり,現代炭素の寄与は極めて小さいことがわかった。これは,Ny土壌では近年の自然火災による新たなの検出は容易でないことを示唆してするものである。このことは,Nyは,島嶼であること,植生が地衣類に限定され,そもそも自然火災の影響が小さいことから,矛盾のない結果ともいえるだろう.いずれにせよ,北極圏土壌中14C-BCプロファイルを他の炭素成分の14C値から,燃焼履歴復元の手がかりを得られる可能性が示された. 4.バイオマーカー分析:燃焼履歴復元の補助データとして,生物活動の履歴復元のためのバイオマーカーとして,リン脂質脂肪酸(PLFA)の脂質クラス分離条件を検討し,真菌及びバクテリアにおいて主要なリン脂質であるPCを植物由来リン脂質を多く含むPG-PEと分離する条件を確立した.これにより,東土試料のバクテリア由来および真菌由来PLFAの解析を行う準備ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの新型コロナウィルスの感染拡大による渡航制限と現地カウンターパート研究機関の受け入れ制限により試料採取に関わる進捗が全くない状態であったが,2022年度にアラスカ現地で採取・保管されていた凍土コアサンプル(アーカイブ)試料を入手し、実試料を用いた検討に着手することができた。また,14C-BC測定については,輸入したアーカイブ試料からのBC抽出や極微量AMS-14C測定のためのスタンダードの調整に着手し、測定準備を進めることができた。これらの状況を総合して,「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
試料の年代決定:SLの4層準(3.5-4.5, 5.5-6.5, 7.5-8.5, 9.5-10.5 cm)について,210Pb計測を行う.210Pbの測定結果を踏まえ,新たなコア試料並びに層準について分析を行う予定である。 燃焼起源分子マーカーPAHsの化合物群レベル放射性炭素分析:本年度入手したコア(アーカイブ)試料からPAHsを抽出・精製して,極微量AMS分析により14C-PAH値を求める.また、東土のデータとの比較のために,燃焼起源で使用される燃料の現代炭素/化石炭素割合が多様な幅を持つと予想される地域の環境試料から抽出したPAHsについても14C-PAH値を求める.さらに, PAHsの抽出,精製、化合物単離、グラファイト化のプロセスにおける現代大気CO2の混入等の影響を定量的に見積もるブランク試験も実施予定である.
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