研究課題
2020年度に予定していた時系列採水システムを購入し、3月に納品された。渦鞭毛虫の定量手法については形態学的な特徴を再整理することで、顕微鏡ベースでの定量手法がほぼ確立出来た。一方、2019年1月に得られていた沈降粒子試料の遺伝子解析の結果から、糞粒様渦鞭毛虫は2種の異なるGyrodiniumu属からなること、および2種が鉛直的に異なる分布をしていることが見いだされた。他の科研費課題と連携して南極観測で蓄積してきたクロロフィル、栄養塩データを再整理した。現時点でのデータ解析の結果から、漂流系の測器の設定深度はこれまでに採用した0-50 m の範囲で、ターゲットとする季節の表層混合層をカバー出来ることを確認した。投入地点の検討については海氷状況の年変化が大きいことからさらなる検証が必要と考えられた。2019年度で得られた漂流系データおよび沈降試料分析を実施し、海氷融解に伴う表層環境の変化と沈降フラックスのデータを得た。特に対象とする糞粒様渦鞭毛虫が異なるエリアでも沈降しており、海氷の融解が急激に進む期間においてその沈降が顕著であることを確認した。また、センサーデータの解析から、海氷消長に伴って生じる氷縁ブルームとその後のクロロフィル亜表層極大への以降が確認できており、南大洋における表層生態系の季節変動に関して一般的なパターンとして想像されている像を連続データで証明することができた。
2: おおむね順調に進展している
現場観測に向けた準備はほぼ予定通りに進んでいる。また、これまでに蓄積してきたデータ・試料の解析から複数のGyrodinium属が糞粒様の形態を取ることを解明するなど、今後の観測・研究に向けて情報が着実に更新されている。これらのことを踏まえて研究メンバーの議論も頻繁にWeb会議で積み重ねており、観測課題もより明確になってきている。以上の状況から研究はおおむね順調に進展していると判断した。
当初2021年度には海氷が無い状況での採水器を装着した漂流系のテストを予定していたが、新型コロナウィルス対応のために、実施できない状況となった。そのため、2021年度は次年度以降に予定していた蓄積データの解析・論文執筆を進める。また、基本計画に加えて、現有の海氷試料を用いた海氷中における存在量や遺伝的多様性の解明、および動物プランクトン糞粒内容物の遺伝子解析から渦鞭毛虫の被捕食に関する情報の収集に取り組む。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件)
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