研究課題/領域番号 |
20H04313
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
真壁 竜介 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (40469599)
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研究分担者 |
黒沢 則夫 創価大学, 理工学部, 教授 (30234602)
高尾 信太郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主任研究員 (80767955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 南大洋 / 季節海氷域 / 糞粒様渦鞭毛虫 / Gyrodinium |
研究実績の概要 |
2022年度は海鷹丸南大洋航海が実施されたものの、航海日数の短縮に伴い時系列採水器を用いた漂流系観測は実施できなかった。一方、航海中に渦鞭毛虫の分布を定量的に理解することを目的として、表層ポンプの研究用海水、プランクトンネットによるサンプルを東経110度ライン上の南緯40-65度の範囲で取得した。また、氷縁域では海氷を採取した。これらの試料は現在qPCRによる定量分析の準備中である。 一昨年度実施できなかった渦鞭毛虫の培養系確立においても、採取した海氷、ネット試料を船上でソートし、それらを生きた状態で持ち帰ることができた。生きた細胞の培養実験は、現在増殖を促すための餌の選定をはじめ、培養系確立に向けて様々な条件の検討を実施中である。加えて、砕氷艦「しらせ」において、多数の海氷および周辺海水を採取した。昨年度までに蓄積サンプルの分析についてはqPCRによって対象とする渦鞭毛虫のデータが揃いつつあり、新たに取得したサンプルの分析結果を加えて論文執筆を進める。 2018年度および2019年度に実施した漂流実験で得られた渦鞭毛虫の結果から、糞粒形態をとるものはGyrodinium属2種であることを見出したことを、これらの沈降フラックスにおける貢献や2種の鉛直的な棲み分けの発見と合わせてまとめ、国際誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定と比べて時系列採水器を導入した漂流系観測は航海の中止(2020, 2021年度)や航海日数の短縮(2022年度)のために大幅に遅れている。一方で蓄積してきたサンプルの分析は順調に進んでおり、特に海氷試料は東南極域の様々な海域で得られている。これらのサンプルに本課題で設計したプライマーを用いてqPCRを実施し、Gyrodinium属の存在量と分布特性が確認できつつある。また、共同研究を行っている海氷物理分野の研究者とともに、これまでに得られて海氷のを逆追跡することで、海氷生成場所・時期の特定を進めている。これと得られたGyrodinium属の海氷中存在量と合わせることで、Gyrodinium属の沖への移流の鍵となる海氷中への取り込みについての解析を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は次の5つについて進める。 (1)糞粒様渦鞭毛虫を種レベルで把握した第一報となる論文を公表する。 (2)分析済みのqPCRデータに加えて昨年度取得した定量サンプルのqPCR解析を実施し、投稿準備を進める。(3)培養系確立に向けて培養環境および餌供給方法の検討を行う。また、海鷹丸南大洋航海にて、培養のためのさらなる細胞の確保を行う。(4)海鷹丸南大洋航海において世界初となる時系列採水器を実装した漂流系観測を行う。 残念ながら今年度の観測は1日程度の漂流に留まるが、観測手法確立は南大洋における表層生態系の時系列観測に必須であり、我々の次期観測や他の科研費課題との共同観測を通して成果を出し、国際的な観測網構築へ向けて必須の重要なステップであると認識している。(5) 8月にホバート開催されるSouthern Ocean Observing Systemの大会に研究チームの複数メンバーが出席・発表を行い、開発した漂流系観測システムと糞粒様渦鞭毛虫の知見について国際的な関連コミュニティーに周知する。
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