研究課題/領域番号 |
20H04315
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井尻 暁 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70374212)
|
研究分担者 |
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30386619)
村山 雅史 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (50261350)
土岐 知弘 琉球大学, 理学部, 准教授 (50396925)
野口 拓郎 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (90600643)
乙坂 重嘉 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40370374)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 海底泥火山 / 溶存有機態炭素 / メタン |
研究実績の概要 |
2021年度に東北海洋生態系調査研究船「新青丸」による種子島沖海底泥火山群の調査航海で得られた試料の分析・データの解析を行った。MV#08、MV#10、MV#15と番号がつけられた泥火山にて、CTDロゼット採水システムにより海水試料を採取し、ピストンコアラーによって堆積物コアを採取した。海水試料と堆積物から抽出した間隙水試料中のDOC濃度を、高温接触酸化法を用いた全有機炭素計により誤差±1.8%の高精度で測定した。また,海水試料については、溶存CH4濃度とその炭素同位体比を測定した。海水中のDOC濃度は、MV#08の2点の採水地点では海底付近で最も高く、水深の浅い方向に向かって減少していた。この鉛直分布は,海底からのDOC放出を示している。定常状態での渦拡散を仮定しDOCの濃度勾配から求めた鉛直方向へのDOCフラックスはM8-1が42×10^3 μmol m-2 d-1,M8-2が20×10^3 μmol m-2 d-1であった。一方、MV#10、MV#15では明らかなDOC濃度の上昇が見られず、DOCの放出が確認できなかった。間隙水試料からは全ての泥火山からDOCの移流が確認され、MV#10が最もフラックスが大きかった。海水試料と間隙水試料の違いは、MV#10、MV#15の堆積物から放出されたDOCが易分解性であり、海底表層または海水中で速やかに分解され、海水中では検出されなかった可能性を示す。一方,海水中へのCH4の放出は、MV#08からは確認されず、MV#10,MV#15からは確認されたため、海水中へのCH4の放出とDOCの放出は相関しないことが明らかとなった。 また、DOCの放射性炭素同位体比の安全な分析手法を開発した(Otosaka et al., 2022)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海底泥火山からメタンだけでなく、溶存有機態炭素(DOC)も放出されていると仮説を立て、泥火山上の水塊と間隙水中の溶存有機態炭素濃度を測定し、泥火山から海水中へDOCが放出されていることを初めて明らかにし、そのフラックスも見積もることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
泥火山から放出されるDOCの起源を明らかにするために、DOCの放射性炭素同位体比を測定する。
|