研究実績の概要 |
SEIB-DGVMの火災モジュールについて、既存のGlobFRIM (Thonicke et al., 2001) ではリターバイオマスがある程度ある地域で広範囲にわずかな火災が起こるようになっているが、これはGFED等の衛星観測とかなり異なるため、モジュールをSPITFIRE (Thonicke et al., 2010) へ変更することとなった。コーディングおよび、落雷データとしてLIS/OTD High Resolution Full Climatology (HRFC) V2.3.2015を、人口分布としてGridded Population of the World (GPWv4)を入力値として用意した。その結果、火災の空間分布が大幅に改善された。これはSPITFIREによる発火源としての火の不始末等の人為と、乾燥落雷による自然的なものを考慮することができたことによる。次に、MirocAR5による気候シナリオ (historical, RCP 8.5, RCP 6.0, RCP 4.5, and RCP 2.6)による予測を行った。その結果、気温上昇とCO2濃度増加による森林バイオマス及びリター増加は、火災面積とそれによる消失バイオマスを増加させることがわかり、特により気温上昇とCO2濃度増加の割合の大きいRCP8.5がより大きい消失バイオマスを示した。 さらに富士北麓のカラマツ林を対象としたモノテルペン放出の再現は、当初SEIB-DGVMで行うことを想定して準備していたが、光合成プロセスの計算にFarquharらによる生化学式を導入した方がより効率的であると考えられた。そこで当該式の入っている陸域生態系モデルVISITにBVOCモジュールを組み込むことによって渦相関フラックスタワーで測定されたモノテルペン、総一次生産の両方をうまく再現できることがわかった。
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