研究課題
本研究において福島県の放射性セシウム高汚染地区内の林地に設置した観測サイトを活用し、大気エアロゾル特にバイオエアロゾルのサンプリングを連続的に実施している。そのサンプリングで得られた試料を用い、バイオエアロゾル自体の濃度および微生物や真菌に特有のエアロゾル有機成分濃度と大気セシウム放射能濃度を比較することにより、バイオエアロゾルを介した放射性セシウムの大気再飛散について、より定量的に理解できた。またエアロゾル試料から不溶性放射性セシウム微粒子(CsMP)を検出し、その大気再飛散の影響も考慮した上で、バイオエアロゾルによる再飛散過程の重要性を評価できた。また、筑波実験植物園林内においても、フィルタサンプリングおよび浮遊菌カウンタによるバイオエアロゾル濃度観測を実施し、その濃度の季節変化や日変化について知見を得ることができた。特に、これまであまり報告例のない日中のバイオエアロゾル濃度増加が見られ、今後その原因について検討していく。採取したフィルタ試料から林内バイオエアロゾルを構成する真菌胞子やバクテリアのメタゲノム解析を行い、構成種群集の変化との関係を明らかにしつつある。また、同じ林内で採取したキノコの胞子やバイオエアロゾルの氷晶核能について、昇華凝結および内部凍結過程での氷晶化温度により評価を開始し-15℃以上で氷晶化するケースがしばしばみられることが分かった。さらに、ドローンに搭載し森林上空でバイオエアロゾルをサンプリングする装置を開発し飛行試験を実施した。
3: やや遅れている
バイオエアロゾルを捕集したフィルタの蛍光分析により濃度だけでなく、バクテリア、真菌、花粉などのカテゴリ毎の構成比を測定する手法の開発は2021年度中に完了する予定であったが、室内実験中の周囲エアロゾル混入の影響やバクテリアサンプルの定量に問題があり、完了することができなかった。問題対処法が確立したので、実大気のバイオエアロゾルに適用できるよう、準備を急いでいる。放射性セシウム高汚染地区内の林地に設置したタワー(高さ約11m)で、傾度法及び渦集積(REA)法によりバイオエアロゾル及び放射性セシウムの放出フラックスを計測する予定であったが、COVID-19感染対策での緊急事態宣言により現地作業が十分行えなかったため。2021年度は試験観測レベルにとどまった。そのデータ解析を行っており、2022年度には集中観測を実施する予定である。また、筑波実験植物園林内において、フィルタサンプリングおよび浮遊菌カウンタによるバイオエアロゾル濃度同時観測を実施し、その濃度の季節変化や日変化、さらにその林床および樹冠での違いについて検討する予定であったが、同様に緊急事態宣言により現地作業ができなかったため、同時観測があまりできなかった。このフィルタサンプルを用いバイオエアロゾルの氷晶核能の測定を開始したが、同じ理由により試験的な実施にとどまり、変化を記述する上で十分なサンプルが得られなかった。
バイオエアロゾルをフィルタ上に捕集し、その蛍光分析を行う装置の開発はほぼ完了しており、バイオエアロゾル濃度だけでなく、バクテリア、真菌、花粉などのカテゴリ毎の構成比を定量するため、測定した蛍光スペクトルを解析するソフトウェアの開発を急いでいる。それにより、実大気のバイオエアロゾル濃度とカテゴリ構成比の観測・データ解析の労力と効率を大幅に改善できる見込みである。バイオエアロゾル及び放射性セシウムの放出フラックスの定量化は、本研究での重要な目標の一つであり、上記装置開発の完了後はこの観測とデータ解析に集中する。これまでの試験観測の結果を解析し適切な観測プランを立て、放射性セシウム高汚染地区内の林地タワーでの傾度法及び渦集積(REA)法によるバイオエアロゾル及び放射性セシウムの放出フラックス観測を実施する。ドローン搭載型のバイオエアロゾルサンプラのについては、飛行試験等により動作は確認できたが、ポンプ脈動による流量の不安定が問題であったので、脈動のダンピング機構を追加し、タワー上空でのサンプリングを行い、上空への放出についての観測も実施する。筑波実験植物園林内において、2021年度は断片的にしか実施できなかった、フィルタサンプリングおよび浮遊菌カウンタによるバイオエアロゾル濃度同時観測を継続的に実施することで、その濃度の季節変化や日変化、さらにその林床および樹冠での違いとその要因について明らかにする。特徴的な濃度変化時のサンプルを抽出して、メタゲノム解析を行うことで、環境要因変化によるエアロゾル放出の応答について、群集レベルで明らかにする。
すべて 2022 2021
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