研究課題/領域番号 |
20H04320
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
須藤 健悟 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40371744)
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研究分担者 |
入江 仁士 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 准教授 (40392956)
伊藤 昭彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 室長 (70344273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全球化学気候モデル / 陸域生態系モデル / 揮発性有機化合物 / 有機エアロゾル / 大気酸化能 |
研究実績の概要 |
(1)化学気候モデリング:化学気候モデルCHASER(MIROC)中において、不均一反応、亜硝酸(HONO)化学の新規導入や雷NOx発生過程の改良を昨年度に引き続き行い、CHASERの化学計算の大幅な更新・改良を実施した。新しいCHASERモデルによる実験結果は、地上・船舶・航空機等の各種最新観測データセットで詳細に検証し、結果を整理し、論文公表を行った(Ha, Sudo et al., 2021)。とくに、HONO化学の新規導入については、ドイツのグループが主体的に行った東アジア沖における航空機観測(EMeRGE)のデータを利用し、どのタイプのHONOのソース(主に不均一反応)が最も重要であるか高度ごとに詳細な評価を行い、世界初ともいえる知見を提供することに成功した。 (2)陸域生態系モデリング:昨年度までに行った地上VOCs観測データをもとにした、陸域生態系・微量ガス交換モデルVISITの調整を実装し、CHASERに導入した。実験結果について、TROPOMIによるホルムアルデヒドHCHOの観測データにより全球的な検証を行った。検証結果については、論文としてまとめる(Atmospheric Chemistry and Physics, ACPに投稿予定)とともに、TROPOMI衛星観測データとCHASERの同化システム(CHASER-DAS)によりBVOCsの放出量を推定する逆解析手法についても導入に着手した。また、大気酸化能との関連において重要なメタンの変動トレンドについても、VISITとCHASERを組み合わせた要因解析を実施した。 (3)地上リモートセンシング観測:MAX-DOAS(タイ・ピマイおよびインド)・TROPOMIおよびCHASERを組み合わせ、HCHO、NO2やエアロゾルの変動解析を実施した。この結果、バイオマスバーニングや土壌NOx放出量の各寄与が定量的に評価された(Hoque et al., submitted to ACP)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大気化学モデリング、陸域生態系モデリング、リモートセンシングデータ解析、どの項目においても当初の計画通りの成果が出されており、論文化も順調に進められている。VOCsとも関連性のあるメタンや大気酸化能についての変動要因解析も実施できた点は特筆すべきと考える。このため、(1)の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
陸域生態系に関連する生物起源有機化合物BVOCsについて、協力者(宮崎)が開発した大気化学データ同化システムTCR(Miyazaki et al.,2017)とTROPOMI衛星観測データを組み合わせ、高精度のBVOCs放出量の逆推定を実施する。結果については、分担者(入江)が展開している地上MAX-DOAS 観測データを用いた複合的な検証を実施し、不確定性の低減を目指す。 上記のデータ同化・逆推定とこれまでの検証情報を総合的に整理し、VISITにおける、放出量計算方法や放出係数の調整・修正を行う。修正されたVISIT のBVOCs 放出量について、再検証を行い、このプロセスの繰り返しによりVISIT の最適化を行う。この際、陸域炭素循環への波及効果も確認する。最後に、最適化されたBVOCs 放出量およびその変動 の推定をCHASER による過去~現在~将来の大気化学・エアロゾル・気候の再現・予測実験に導入し、大気環境や気候の変動における、BVOCs 変動の役割・インパ クトを評価する。CHASER 実験については、研究代表者が実施中であるIPCC 第6 次報告書関連の国際プロジェクト(CMIP6)に準拠したシナリオ実験を利用・応用 し、本実験結果をIPCC 等に向けて効率的に提示する。
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