研究課題/領域番号 |
20H04321
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山澤 弘実 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70345916)
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研究分担者 |
森泉 純 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90303677)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラドン壊変核種 / アジア域広域輸送 / Pb-210湿性沈着 / 大気拡散モデル |
研究実績の概要 |
ラドン輸送壊変核種沈着モデルの開発では、計画通り、昨年度開発の簡易沈着計算スキームによる水平9㎞格子を用いた複数年分の日本域沈着計算を行い、Pb-210湿性沈着量は日本海側で冬季に200 Bq m-2 mon-1を超えること、日本海側でも沈着量は系統的な分布を持つこと、及び背後の山岳のスケールに応じて水平数十kmスケールの高沈着域が形成されること等の沈着量分布の広域的特徴を見出した。また、従来大幅な過小評価であった青森県六ケ所村での沈着量が、3㎞格子計算で大幅に改善されることが示された。しかし、まだ数割の過小評価であり、雪の水平ドリフト効果及び沈着過程モデルの改良に着手した。 沈着過程の新たなモデル化に着手し、雲水分量からの降水への転換速度に基づくラドン壊変核種除去速度を採用した沈着過程モデルを作成し、石川県域を対象に検証を開始した。その結果、沈着量を過小評価していた一部の年で大幅な改善が見られた。沈着量再現では、モデルによる地形再現との複合的な影響が示唆されたため、モデルの水平分解能との関係及び他の対象地域(青森)での再現性検証に着手した。また、Pb-214, Bi-214沈着量検証データとして線量率データを用いるために、測定点(青森)の現地調査を実施した。 降水中Pb-214, Bi-214濃度測定装置について測定を継続し、十数例の降水中濃度の時間変化データを取得した。データの時間分解能は測定精度(計数誤差)とのトレードオフの関係になるが、10分値として解析可能であることが確認され、従来の30-60分値に比べて、精度が高く高分解能のデータが得られつつあり、湿性沈着過程の物理モデル構築に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルによる複数年計算を実施し、我が国の沈着量分布の特徴について第1段階の評価結果が得られたことは、概ね計画通り、あるいはやや計画以上の進捗である。湿性沈着過程のモデル化については、物理機構のモデル化及び計算モジュールの作成を行い、検証に着手したことは計画通りである。降水時の線量率解析については現地調査を実施し、新型コロナの影響による現地調査に関する遅れを回復した。降水中Pb-214,Bi-214濃度測定については、継続的な測定を開始し、データを蓄積しつつある点で概ね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
大学外への移動を伴う現地調査及び観測については、昨年度進捗を回復できた部分があり、全体としては概ね順調な進展のため、大枠では当初計画に従った推進とする。 モデル開発については、昨年度作成した湿性沈着スキームを用いた再現性の検討を進め、モデルの全般的検証を行ったのち、複数年についてPb-210沈着量分布の解析を行う。モデル検証では、Pb-210の測定データは少数のため、降水中の短半減期核種濃度の独自測定結果及び沈着短半減期核種による線量率上昇データを用いることにより、より詳細な検証を目指す。また、モデルの地形再現性(水平解像度)がモデル計算精度に影響を与えている可能性が示されたことから、湿性沈着の物理機構モデルとモデル水平解像度の関係についても検討を行う。 現地調査等の大学外の活動については、新型コロナの感染状況が許す期間に極力集中して行い、極力進捗を確保する。
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