研究実績の概要 |
本研究では琵琶湖水中から細菌およびウイルスを単離し、種を決定した。さらにE.coliとT4ファージを用いて溶菌有機物の生物利用性を検証した。 まず単離した細菌株について、これはSphingomonadaceae属のSphingopyxisであることがIdentity 98.507%で同定された。このSphingomonadaceae属は琵琶湖水中(2018年9月から2019年12月までのデータ)にて存在が確認されている。また、単離したSphingomonadaceae属に感染するファージ(VSN-002)のゲノムは41,771 bpから成り、そのGC含有率は61.7%であった。合計で50個のタンパク質がファージゲノム内にコードされ、その長さは138から3,186 bpに及んだ。推定された50個のタンパク質のうち、19個は機能未知のタンパク質に分類され、31個は推定可能な機能を持つことが示された。これまでに報告されているバクテリオファージと相同性(類似度95%以上)が無かった。さらに、宿主の代謝を促進することでウイルスの生産量を増加させると考えられる補助代謝遺伝子(AMG)もファージゲノム上に確認された。 溶菌由来有機物に関する実験では、まずは細菌およびウイルスの培地の洗浄を限外ろ過により行い、無機塩培地としてM9、細菌の炭素源としてグルコースを使用した。そこにファージを添加し、溶菌実験を行った。経時変化はOD600による濁度測定と三次元蛍光分析を実施した。その結果、ファージを添加した系がそうでない系に比べてタンパク様ピークの強度が大きく、またフミン酸様ピークの強度もわずかに増加した。このことからファージによって溶菌した細菌から放出される有機物が難分解性有機物に変換される可能性を検証することができた。
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