研究課題
オイルパーム農園では、果房の収穫時に剪定される大型葉、パーム油の搾油時に生じる空果房、および再植栽時に伐採されるパーム幹など、膨大な量のパーム残差が農園内に放置され、気候変動をもたらす要因となる。例えば、パーム残差が土壌微生物によって分解される場合、膨大な量のCO2が一時的に大気中に放出されるものの、放出されたCO2はパーム樹木の成長に伴い吸収されるため、気候変動への影響はおおよそニュートラルとなるが、シロアリによって採餌される場合には、腸内共生細菌によるセルロースの分解によって、CO2の28倍の温室効果を持つCH4として大気中に放出される。さらに将来生じうる温暖化はシロアリに代表される分解者の活性化を通して、更なる気候変動をもたらす要因となりうる。そこで本課題では「温暖化操作実験下における温室効果ガス発生量の統合的観測」により、将来生じうる温暖化に対して分解者がどのような応答を示し、オイルパーム農園から放出される温室効果ガスがどう変動するのかといった疑問を解明する。これまでの研究の結果、①温暖化によってシロアリによるパーム残差の分解が促進されること、②シロアリによるパーム残差の分解によって膨大な量のCH4が放出されること、また、③シロアリによるパーム残差の分解に伴って発生する一次分解物の微生物分解によって土壌からのCO2放出が促進されることなどが明らかとなった。オイルパーム農園では果房の収穫等の農園管理に伴う土壌踏圧によって土壌が嫌気化することで、土壌が有するCH4吸収能が低下することが明らかとなっていることから、こうしたシロアリによるパーム残差の分解に伴うCH4およびCO2の発生は気候変動に多大な影響をもたらすことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響に伴う海外渡航制限および当該国における州間移動制限等により、一部予定していた調査ができない等の問題があったが、制限の解除により予定していた調査をおおむね順調に実施できているため。
「温暖化操作実験下における温室効果ガス発生量の統合的観測」を継続して実施するとともに、遺伝解析技術を用いた分解者の特定や動態評価を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
畑地農業
巻: 756 ページ: 8-12