研究課題/領域番号 |
20H04330
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日出間 純 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (20250855)
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研究分担者 |
寺西 美佳 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10333832)
佐藤 修正 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70370921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CPD光回復酵素 / 細胞内局在 / 葉緑体移行シグナル / UVB適応機構 / オートファジー / 葉緑体定位運動 / 植物 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に【研究課題1】CPD光回復酵素の葉緑体局在に関する植物種間差、【研究課題2】細胞内の各オルガネラにおけるUVB誘発CPD量の蓄積と葉緑体活性、およびオートファジー活性との関係、に関して実施した。 課題1では、進化の過程で地上に初めて進出したゼニゴケ、シダ植物のイヌカタヒバ、マメ科植物のダイズ、ミヤコグサ、被子植物のアンボレラ、さらにイネ科のトウモロコシ、コムギ、オオムギのCPD光回復酵素(PHR)を対象に、PHRの細胞内局在を、イネのプロトプラストを用いた一過的発現解析を実施した。その結果、イネ科植物のコムギ、オオムギ、マメ科のミヤコグサ、およびゼニゴケではPHRの葉緑体移行性は確認できたが、他のトウモロコシ、アンボレラ、ヒバでは確認できず、PHRの葉緑体局在には植物種間差が存在する可能性を示した。そこで、PHRのN末端配列と移行性の有無から、葉緑体移行に関与するアミノ酸配列を推測し、さらに推定したアミノ酸を置換したコンストラクトを用いて葉緑体移行性を調べたところ、イネPHRの7番目のセリン、および8,9番のプロリンが葉緑体移行性に強く関わっていることを見出した。 課題2では、PHRの葉緑体局在性の異なるイネとシロイヌナズナを材料に、UVB照射による各オルガネラでのCPDの蓄積、葉緑体活性、およびオートファジー活性との関係を解析した。この解析の途中で、我々は、各オルガネラでのCPDの蓄積は、細胞内での葉緑体の配置が大きく影響を与えるという新たな事実を見出した。特に、PHRが葉緑体に局在しないシロイヌナズナは、イネ以上にダイナミックに紫外線強度に依存して葉緑体配置を変化させて、核DNA上でのCPD蓄積を防御していることを見出した。さらに防御により障害を受けた葉緑体は、積極的にオートファジーにより、液胞へと排除していることも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響により、一部の課題で当初の研究計画よりも遅れが生じたが、研究計画を立案した際の仮説を支持する結果を順調に得ている。また、当初、想定していなかった事実、「これまで青色光依存的な応答であると知られていた葉緑体定位運動が、紫外線に対しても特異的に応答している」という新たな事実を見出した。したがって、研究は、概ね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
【課題1】これまでにイネPHRが葉緑体に移行するするために重要なアミノ酸を見出した。また、PHRが葉緑体に移行する植物は、イネ科および一部の植物にのみ見られる特徴であることが見出された。今後は、この配列を何が認識し、どのような機構で葉緑体へ移行するメカニズムを獲得したのかを明らかにするため、詳細なPHR葉緑体移行の分子メカニズムを明らかにする方針で研究を進める。 【課題2】これまでは、PHRが葉緑体に移行するイネと移行しないシロイヌナズナを用いた解析であった。そこで、今後は、シロイヌナズナ以外でPHRが葉緑体に移行しない植物を材料に、シロイヌナズナ同様に、紫外線により葉緑体の配置を変化させる能力を有するのか?またオートファジー活性が高いのか否か?を解析することで、PHRが葉緑体に移行しない植物のUVB適応機構を考察する方針で研究を進める。 【課題3】我々は、これまでの研究過程で、葉緑体の配置が紫外線環境で変化するという新たな事実を見出した。そこで、これまで青色光依存的に応答する葉緑体定位運動に着目し、種々の葉緑体定位運動の変異体を材料に、UVB特異的な葉緑体応答を明らかにする方針で研究を進める。
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