DNA二本鎖切断修復において重要な役割を有するヒストンH2AXによる遺伝子発現制御機構が近年着目されている。本研究ではH2AX欠損細胞における遺伝子発現レベルの変化を網羅的に解析したところ、非損傷誘発時でもDNA損傷の相同組み換え修復に関与する遺伝子の発現が有意に上昇していること、細胞の増殖・接着・分化に係るシグナル経路関連遺伝子の発現が有意に上昇していることが明らかとなった。これらの結果はH2AXがDNA損傷発生時にゲノム安定性に機能するだけではなく、DNA損傷の有無にかかわらず生物の恒常性を維持するために遺伝子発現制御をしているという、新しいH2AXの機能を提唱するものである。
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