Dsup はクマムシ固有の DNA 結合タンパク質であり、in vitro 、培養細胞内で放射線や活性酸素種からDNAを防護する活性を持つ。Dsup タンパク質の配列は新加速度が速く、これまでに同じ分類学上の上科に属する2種のクマムシからしか見つかっていなかった。これらとは別の上科に属するクマムシのゲノム配列を決定した結果、配列相同性は低いがシンテニー上同じ位置に存在しDsup同様C末端領域の塩基性が高い遺伝子を同定した。3種の配列比較から短いが保存された配列や性質の類似した領域が見いだされDsupの機能的に重要な領域である可能性がある。 Dsup には HMGN モチーフに類似した配列が存在しこの領域のヌクレオソームへの結合が in vitro でのDNA保護活性に重要であることが指摘されてきた。当該領域の役割を明確にするために複数の変異Dsupタンパク質を作出し活性を測定した結果、当該領域はヌクレオソームを形成していない DNA 単体に対する結合にも寄与することが明らかとなり、必ずしもヌクレオソームへの結合を担うものではない可能性が示唆された。当該領域を含めた Dsup の DNA/ヌクレオソームへの結合様式について追加解析中である。また、Dsup によるストレス耐性向上は培養細胞および植物でも報告されているが、動物個体についてはどのような影響を与えるか検証が進んでいなかった。このギャップを埋めるため、ショウジョウバエに Dsup 発現カセットを組み込んだ transgenic fly を共同研究により作成した。発現させた Dsup タンパク質は予想通り 核DNAと完全に共局在したが、Dsup を構成的プロモーターで全身で強く発現させると致死となったことから、発生時期に応じた適切な転写制御を行う promoter の探索が重要であると考えられ検討を進めている。
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