研究課題/領域番号 |
20H04333
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
砂田 成章 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70807677)
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研究分担者 |
三木 義男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
下川 卓志 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 研究統括(定常) (20608137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多剤併用 / 合成致死 / DNA損傷修復 / 化合物スクリーニング / 既存薬再開発 |
研究実績の概要 |
PARP阻害剤をはじめとしたDNA損傷型抗がん剤に対する、がんの薬剤耐性獲得は、再発や転移を引き起こし治療を困難にする。そのような薬剤耐性がんの克服法として、多剤併用療法が挙げられる。そこで我々は、DNA損傷レベル(DNA二本鎖切断; DSB)を指標に、DNA損傷修復過程をハイスループットにモニタリングするスクリーニングシステムを構築した。本年度は、当該システムを利用し、DNA損傷型抗がん剤と併用することで、相乗的にDNA損傷量を増加させ、細胞致死を促進させる(合成致死)低分子化合物の探索を実施した。
これまでに、機能既知化合物ライブラリ約5000化合物を対象に、DNA損傷型抗がん剤としてPARP阻害剤あるいはエトポシド(トポイソメラーゼⅡ阻害剤)と併用、化合物のDNA修復への影響解析を実施した。その結果、合成致死性を示すDNA損傷因子と化合物の併用組み合わせを複数同定した。代表的な組み合わせとして、PARP阻害剤に対する炭酸脱水酵素阻害剤の一種のTioxolone、エトポシドに対するステロイド化合物を同定した。さらに、高次解析を実施、これらの化合物は、主要なDSB修復経路である相同組換え(HR)や非相同末端結合(NHEJ)に対して影響しないことがわかった。つまり、上記の併用法はDSB修復阻害以外の機構により、合成致死性を示すことを見出した。ある疾患に有効な薬から、別の疾患に有効な薬効を見つけ出す点で、既存薬再開発の位置づけで研究を進める。
さらに、当該スクリーニングは、DNA損傷を指標とする点で、単剤によりDNA損傷性を有する化合物も検出される。これらの化合物は、例えばDNA損傷型抗がん剤開発への発展も期待され、本研究目的以外の分野への波及効果も有する点で意義が大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究全体では、①化合物のスクリーニング、②合成致死のメカニズム解析、③動物実験の流れを計画している。 本年度は、化合物スクリーニングシステムの構築とバリデーションが完了した。 さらに、機能既知化合物5000種を対象にスクリーニングが完了、合成致死を示す併用法を複数同定し、一部はメカニズム解析も実施している。 したがって、研究期間全体に対する達成度も順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
合成致死性を示す代表的な併用組み合わせとして挙げた”PARP阻害剤とTioxolone”、”エトポシドとステロイド化合物”の他にも、シーズとして複数の組み合わせを同定している。有用な合成致死性を示す組み合わせについては、可能な限り同時並行で解析を実施する。 各合成致死性の詳細な機構が明らかになりつつある段階で、動物実験にも着手、臨床応用へ向けた道筋を提案する。
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