研究課題
高緯度海域に分布する海氷は、地球規模の気候変動を制御する要因として大きな役割を担っている。従来、海氷は、物質循環の観点において大気と海洋間の「障壁」として認識されてきた。しかし、実際、海氷表面では、結氷による濃縮効果によって溶存物質が高濃度化し、大気に対して放出源になることが予想される。ただ、極域の厳しい環境での観測の難しさにより、海氷表面での「低温化学」に関する反応機構の解明に至っていない。本研究では、自然界で起こる結氷現象を室内でのチャンバー実験で再現し、有機臭素ガス、特にブロモホルムに関して、海氷表面での化学反応機構・大気への放出過程を明らかにすることが目的である。本課題は、極域大気中オゾン濃度の急激な減少を招く有機臭素ガスの発生源が特定されていないことから設定した。本研究で提唱する海氷表面でのブロモホルム生成は、有機臭素ガスの大気への新たな発生源の提案となり、長年謎とされてきた大気中オゾン消失現象の原因解明に一石を投じることとなる。しかし、これまでの応募者らによる観測事実と低温環境での化学反応の新たな知見により、反応仮説を提唱するに至ったが、反応機構は検証されていない。そこで本年度は、チャンバー実験を実施し、本研究の解明に向けてのデータの採取を行った。具体的には、購入したチャンバーを利用した化学反応実験、また、室内での結氷および積雪を再現し、ブロモホルム生成に関する室内実験を実施した。また、これまでの観測データの解析を実施した。これらの解析を実施することにより、当初の目的に向けて順調に研究が進んでいる状況にある。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、チャンバー実験を実施し、本研究の解明に向けてのデータの採取を行うことができた。特に室内で海氷を作成し、その上に積雪を加えるなど、より海氷環境を再現した実験を実施することができた。また、これまでの観測データの解析を実施した。これらの解析により、当初の目的に向けての解析作業が順調に進んでいるため。
これまで、チャンバー実験を実施し、本研究の解明に向けてのデータの採取を行った。また、これまでの観測データの解析を実施してきた。今後の研究では、これらのデータをまとめ、海氷が有機臭素ガス、特にブロモホルムに関して、海氷表面での化学反応機構・大気への放出過程を明らかにする。そして、まとめたデータは論文としてまとめ国際誌に投稿する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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