研究課題
本研究は大気中の黄砂を含めた大気汚染物質が花粉症を含めたアレルギー性疾患症状を増悪するメカニズムを解明することを目的としている。本年度は動物疾患モデルでは、大気汚染物質を用いた結膜刺激試験を行い、大気汚染物質抗原によるアレルギー憎悪のメカニズムを解明するための研究を行った。以下の実験を行った。① 動物眼(マウス)に大気中物質である黄砂、二酸化珪素、黄砂のアジュバントとなるディーゼル因子(炭素性粒子)、花粉エキスを点眼する。コントロールとして生理食塩水を用いた② 点眼前、点眼後10分、1時間、24時間後に結膜充血スコアによる重症度の判定を行う。③ 点眼前、点眼後10分、1時間、24時間後に涙液を採取し、涙液中のtotal IgEならびに、各種特異的IgE測定をイムノクロマト法ならびにElisa法により測定し、炎症性サイトカイン濃度をElisa法により測定する。④ 点眼前、点眼後に、経時的に結膜サンプルを摘出し、組織中の好酸球、IL-6 IL-4,5,13などの炎症性サイトカインの局在を免疫組織学的手法により調べた。その結果、動物眼において、黄砂によって結膜を暴露すると、結膜上皮が物理的に損傷されることが証明された。また、結膜炎症状および結膜中のサイトカイン濃度、IgE量が増加した。一方、花粉単独暴露と比較して、黄砂暴露の後に花粉エキスを滴下すると、結膜炎症が悪化した。結膜実質中にはマクロファージの増加と、炎症細胞の増加が見られた。また、結膜表面を覆うムチンが減少し、上皮のバリアーが損傷していることが確認された。このことは、黄砂などによる物理的な上皮バリアーの損傷により、花粉抗原がより容易に結膜下へのアレルギー・炎症を引き起こしやすくなっている可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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