研究課題/領域番号 |
20H04348
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松井 一彰 近畿大学, 理工学部, 教授 (40435532)
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研究分担者 |
鏡味 麻衣子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20449250)
川津 一隆 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20747547)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下水生態系 / 微生物群集 / 薬剤耐性細菌 / time series / 動態予測 |
研究実績の概要 |
1年目となる本年は、研究計画書にて提示した3つの研究ステップのうち、ステップ1「下水管内での微生物動態調査法の確立」と、ステップ2「微生物群集と薬剤耐性細菌の経時的な調査」を中心に研究を進めた。実施した内容は以下のとおりである。①異なるタイムスケールでの下水採水が実現できるよう、担当の自治体と運営会社の協力を得ながら、採水場所の確保と連絡体制や諸手続を含めた採水環境を整えた。②設備備品として申請していた自動採水器の運転調整を現場にておこない、年変動と日変動を追跡するための採水作業を開始した。③下水からDNAを回収する方法についての検討をおこない、確立した方法をマニュアル化することで、実験者間での差がでないように配慮した。マニュアル化した方法については米国の採水でも利用している。④公表されている学術論文を元にして指標となる薬剤耐性遺伝子の選別し、不純物混入が予想される下水サンプルを用いても、論文報告通りの遺伝子検出感度が得られることを検証した。当初予定していた薬剤耐性遺伝子のうち、期待していた感度が得られなかったターゲットについては、一旦対象リストから外す予定である。⑤細菌以外の真核微生物動態を追跡するために、共同研究者と次世代シーケンサーを用いた群集構造解析に着手した。⑥米国の研究協力者とともに、米国ウィスコンシン州における下水の経時的な採水を実施した。日本で確立した下水の採水および分析マニュアルを用いることで、米国での結果と日本での結果の比較検討が出来る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書にて提示したステップ1についてはすでに検討を終え、ステップ2にてデータを得る段階に入っている。ステップ2にて得られたデータを振り返りながら、ステップ1での検討内容を今後微調整していく。ステップ2については、年変動を追跡する実験の結果が得られるにはまだ少し時間がかかる。しかし日変動を追跡する実験は、水質の分析を終え、薬剤遺伝子の動態と微生物群集動態を解析する作業に取りかかり始めた。データーを元にしたモデルの構築については、共同研究者を中心に検討を始めたところである。また検証実験のための実験水路についても運転条件の検討を始めだした。下水採水のための手続きや実験環境を整えるための申請・認可に少し時間がかかったが、研究としては概ね計画書にて提示した通りに進んでいる。成果発表については、予定していた学会発表(ASLO 2020)が感染症蔓延のためキャンセルとなり、1年目での発表は実現していない。
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今後の研究の推進方策 |
年変動を追跡するための実験を前年度から継続する。また季節や降水量が異なる条件下での日変動を追跡するための実験をおこなう。今年度はステップ2「微生物群集と薬剤耐性細菌の経時的な調査」を中心に進めるが、年度の後半にはデータとして得られた結果をとりまとめる事に留意する。ある程度のデータが整うと予想される秋頃からは、ステップ3「微生物群集と薬剤耐性細菌のモデル構築と動態予測」の作業と検討を開始する。またステップ3を始めるタイミングで最新の解析環境を整えるのが好ましいとの考えから、本年度のパソコン購入予定を次年度に変更することにした(調整金として申請予定)。今後は共同研究者が集まって実験や現場の様子を体感しながら議論し、バーチャルではなく現実的なモデル構築を進める予定であるが、感染症蔓延の程度によって柔軟に運用することになる。また水路においては浮遊性だけでなく、付着性の微生物の関与が大きいため、水路実験においては、付着性を視野に入れた検証を進める予定である。
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