研究課題/領域番号 |
20H04352
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高貝 慶隆 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70399773)
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研究分担者 |
鈴木 勝彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), センター長 (70251329)
若木 重行 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 副主任研究員 (50548188)
松枝 誠 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター, 技術・技能職 (90865700)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射性ストロンチウム / ストロンチウム90 / 質量分析 / 表面電離型質量分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,微少量の試料中に含まれる低濃度の放射性ストロンチウム(Sr-90)の計測法を開発することである。放射線分析や既存の質量分析(MS)法は,低濃度では試料量が十分に存在するか,もしくは,試料が少量のときは高放射能でなければ Sr-90を計測することができなかった。そのため,放射線災害が生じた場合,表面線量で被ばく状況を判断され,涙や粘膜などの放射線感受性の高い部分における放射性物質の付着を検出することができなかった。これを解決するために,表面電離型質量分析装置(TIMS)を利用する新しい計測法を開発する。本研究により,希少試料中(数μL程度)から微量なSr-90の放射能を計測できる画期的な計測法を提供することを目指している。 ファラデー検出器によって安定同位体SrのTIMSプロファイルを取得できることを確認し、そのTIMSプロファイルから濃度計算できることを確認した。安定Srの同位体希釈法とm/z = 90のバックグラウンドノイズ強度(BGN)を測定し、Sr-86をスパイクとして模擬的に安定Srの標準試料で同位体希釈法を行ったとき,標準試料の既知濃度と一致することを確認した。m/z = 90のBGN値はほとんどないことも確認したが、本研究の Sr-90の計算方法によると,バックグラウンド相当濃度(BEC)が高く,実際のSr-90測定においてより低濃度検出を目指す必要があった。そこで四重極マスフィルター(RPQ)によるノイズ抑制を検討した。RPQを使用するとSr-88測定時のm/z=90のBGNが210倍減少することを確認した。これは,本研究により想定している感度よりもさらに200倍以上改善したことになる。その一方で、同重体であるジルコニウム90(Zr-90)の妨害も顕在化するようになり、よりBGNを抑制することが必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定同位体SrのTIMSプロファイルが取得でき、そのTIMSプロファイルからSrの同位体希釈法が出来ている。また、とm/z = 90のバックグラウンドノイズ強度(BGN)を測定し、Sr-86をスパイクとして模擬的に安定Srの標準試料で同位体希釈法を行ったとき,標準試料の既知濃度と一致している。バックグラウンド相当濃度(BEC)が高く,実際のSr-90測定においてより低濃度検出を目指す必要があったが、予定通りに四重極マスフィルター(RPQ)を用いてノイズ抑制の検討に移行している。RPQの使用によりBGNが劇的に減少したものの、同重体であるジルコニウム90(Zr-90)の妨害も顕在化してきたが、Sr-90の微量計測において期待が持てる結果となったため。
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今後の研究の推進方策 |
RPQの使用によりBGNが劇的に減少したものの、同重体であるジルコニウム90(Zr-90)の妨害も顕在化してきた。これについてフィラメント温度コントロールをより精密に実施するとともに、ダークノイズに関するより精査な検証を実施していく。
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