研究課題/領域番号 |
20H04357
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
|
研究分担者 |
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90632729)
Amarasiri Mohan 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50815537)
亀井 樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (80792168)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ソーストラッキング / 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性遺伝子 |
研究実績の概要 |
近年世界中で問題となっている薬剤耐性菌(ARB)および薬剤耐性遺伝子(ARGs)は、下水処理場がその主要な水環境への排出源の1つとされているが、下水処理場流入水にも、無視できない割合でARBが存在していることが明らかとなっている。また、実際に下水処理場から流出するARBやARGsの環境中での挙動については、ほとんど明らかになっていない。 本研究では、都市下水、畜産排水、農業排水や病院排水を受け入れている下水処理場とその放流先河川を対象に、下水処理場に流入してくるARBやARGsの発生源および下水処理場から流出するARBやARGsの水環境中挙動を明らかにすることで、都市水環境を対象としたARBやARGsの発生源対策ならびにARBやARGsによる公衆衛生上の問題解決に資する基盤データを得ることを目的としている。 初年度は山梨・神奈川両県を流れる相模川流域の6地点から、夏季、秋季、冬季の3回サンプリングを実施する予定であったが、COVID-19の緊急事態宣言により、秋季のみの実施となった。その代わりに神奈川県下の病院排水のサンプリングを毎月実施し、各サンプルから従属栄養細菌を約100株ずつランダムに釣菌し、17種類の薬剤に対する感受性試験を実施した。 相模川では、従属栄養細菌数は下流に向かって増加していくのに対して、薬剤耐性菌数は下流に向かって減少する傾向を示し、その95%以上が2種類以上の抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌であることを明らかにした。また、病院排水では、すべての抗菌薬に対して感受性を示した細菌株はなく、すべての細菌株が2種類以上の抗菌薬に対して耐性を示したこと、11種類の薬剤に対する耐性を示す株も3株検出され、病院排水がARBの重要な排出源の1 つであることを明らかにした。 今後も同様の調査を実施し、現象の普遍性や季節性を明らかにしていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響により、当初予定していた相模川流域河川水のサンプリングは1回のみとなったが、薬剤耐性菌の主要な排出源の1つと想定される病院排水を当初予定以上にサンプリングでき、詳細な解析を実施することができているため。
|
今後の研究の推進方策 |
河川水のサンプリングは、緊急事態宣言や学内の移動制限が解除されている期間を最大限活用し、可能な限り当初の予定にあるような季節ごとのサンプリングができるよう準備をしておく。また、病院排水が当初の予定以上に頻回でサンプリングできていることから、フィールドに出られない期間はその詳細解析を行う。また、流域全体としての薬剤耐性菌や薬剤耐性遺伝子の挙動解明が主眼であることから、病院以外の施設(下水処理場や畜産場など)の試料の入手方法についても検討・交渉していくことで、当初目的の達成を図る。
|
備考 |
受賞:第55回日本水環境学会年会年会学生ポスター発表賞(ライオン賞)荻野瑞葵(上記学会発表(2))
|