研究課題/領域番号 |
20H04366
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
珠坪 一晃 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 副センター長 (80293257)
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研究分担者 |
竹村 泰幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (10837199)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電子産業排水 / 有機化学物質 / メタン発酵 / UASB |
研究実績の概要 |
令和2年度は、電子産業から排出される有機化学物質である2-propanol(イソプロピルアルコール)、有機アミン(モノエタノールアミン)、テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含有する合成廃水のメタン発酵処理特性をそれぞれ、ラボスケールの上向流嫌気性汚泥床法(UASB)を用いた連続処理試験により評価した。 その結果、水温20℃未満(18~19℃)の温度条件下で、流入する有機物の90%以上が分解され、また分解された有機物の90%(流入全有機物の80%)が安定的にメタンに転換されることが明らかとなった。これらの結果から、有機化学物質を含む電子産業廃水の処理に対してメタン発酵処理技術(嫌気条件下における分解、メタン化)の適用可能性が示された。それぞれの有機物に対して汚泥の馴致期間は異なり、モノエタノールアミンは数日で分解が開始されるのに対して、2-propanolは約1ヶ月、TMAHについては2ヶ月以上を要した。 また水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の分解に関わる嫌気性細菌の集積培養と、選択培地を用いた単離を試み、最終的にTMAHを単独で分解し、メタンに転換する事が可能な新規のメタン生成古細菌株を得ることに成功した。本TMAH分解メタン生成古細菌は、TMAH以外の有機アミン化合物(トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン)の分解能を有しており、20℃~35℃の温度条件下で生育が可能である事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた電子産業廃水に含まれる主要な有機化学物質(2-propanol, モノエタノールアミン, 水酸化テトラメチルアンモニウム)を含む廃水の上昇流嫌気性汚泥床(UASB)による連続処理試験を実施し、その基本的な処理性能の評価を行い、また、装置内で有機化学物質を分解を担う細菌の単離とその特性評価を行うなど、当初の予定通り研究が進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、有機化学物質を含む電子産業廃水の上昇流嫌気性汚泥床(UASB)による常温(20℃)条件下での連続処理試験を継続的に実施し、長期運転下においてその廃水処理特性の評価を行う。 また、廃水処理の安定性や性能発揮の鍵となる保持汚泥の物理的な性状(汚泥濃度、沈降性や粒径など)、微生物学的な性状(メタン生成活性、代謝経路、菌相構造など)に関する基礎的な情報の収集を行う。
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