研究課題/領域番号 |
20H04366
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
珠坪 一晃 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 副領域長 (80293257)
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研究分担者 |
竹村 泰幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 特別研究員 (10837199)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電子産業廃水 / 有機化学物質 / メタン発酵 / UASB |
研究実績の概要 |
令和3年度は、昨年度に引き続き、電子産業から排出される有機化学物質である2-propanol(イソプロピルアルコール)、有機アミン(モノエタノールアミン)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含有する合成廃水をラボスケールの上向流嫌気性汚泥床法(UASB)を用いて連続処理試験を実施し、保持グラニュール汚泥の物理的な性状と微生物学的な性状を評価した。その結果、TMAHとイソプロピルアルコールを高濃度で流入させた場合、Methanomethylovorans属古細菌が増殖するとともに汚泥の物理的性状の悪化(沈降性の悪化、粒径の減少)を誘発する可能性が示唆された。一方、モノエタノールアミンを同排水に混入させた場合、Methanosaeta属古細菌とGeobacteraceae科細菌が優占し、汚泥の物理的性状の改善傾向を示した。さらに、TMAH、イソプロピルアルコール、モノエタノールアミンの濃度阻害試験を回分試験により評価した結果、TMAHはイソプロピルアルコールとモノエタノールアミンに比べて低濃度でメタン生成反応を阻害することがわかった。以上の結果から、流入水のTMAH濃度を1 gCOD/L程度以下に制御することが安定的なメタン発酵処理にとって重要であることが明らかとなった。 また、昨年度分離したTMAHを単独で分解可能な新規メタン生成古細菌株についてゲノム解析を実施し、既存の近縁株と比較した結果、種レベルで新規の古細菌であることが明らかになった。また当該分離株は、既知のTMAH分解経路とは異なるTMAH分解代謝経路を有している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた電子産業廃水に含まれる主要な有機化学物質(イソプロピルアルコール、モノエタノールアミン、TMAH)がUASB保持汚泥の物理的な性状と微生物学的な性状に及ぼす影響を評価し、また、TMAH分解古細菌の分離株の遺伝子解析による代謝特性の評価を行うなど、当初の予定通り研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、電子産業廃水に含まれる有機化学物質のうち、嫌気的分解代謝経路が明らかになっていないモノエタノールアミンに着目し、長期運転下における廃水処理特性の評価を行う。また、電子産業廃水に高濃度に含まれる硫酸塩がモノエタノールアミンの分解、メタン発酵処理特性に及ぼす影響について、メタン生成活性や硫酸塩還元活性の測定により評価を行うと共に、保持汚泥の物理的な性状(沈降性や粒径など)、微生物学的な性状(メタン生成活性、代謝経路、菌相構造など)への影響に関する基礎的な情報の収集を行う。得られた成果をとりまとめ、電子産業廃水へのメタン発酵処理技術の適用条件について提案を行う。
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