研究課題/領域番号 |
20H04385
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
木村 浩之 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (30377717)
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研究分担者 |
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地下圏微生物 / バイオリアクター / 温泉 / 水素製造 / 分散型エネルギー / 災害対策 |
研究実績の概要 |
付加体は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海底堆積物が大陸プレートの側面に付加してできた厚い堆積層である。付加体の堆積層の多くは泥岩砂岩互層からなり、泥岩層には多くの有機物が含まれている。一方、砂岩層には水が多く含まれており、地下水を貯えた帯水層となる。付加体の深部地下圏の帯水層には、地熱によって温められた嫌気性の地下水とメタンが蓄えられている。これまでの研究において、西南日本の付加体が分布する地域に構築された温泉用掘削井を介して深部帯水層に由来する地下水とメタンを採取した。そして、付加体の深部帯水層におけるメタン生成メカニズムを明らかにしてきた。本研究課題では、これらの深部帯水層に由来するメタン、地下水、微生物群集を活用した分散型エネルギー生成システムを創成する。特に、地下水に含まれる水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌を用いたメタン生成リアクターおよび水素ガス生成リアクターを構築する。そして、温室効果ガス排出削減、エネルギーの地産地消、分散型エネルギー生産、災害時ライフライン供給システムの開発に貢献する。 令和3年度は、静岡市内の深度910メートルの温泉用掘削井から嫌気性の地下水を採取し、1トン型バイオリアクターに添加した。その後、食品廃棄物等の有機基質を加え、最適化した温度にてリアクターをインキュベートし、水素ガス生成を試みた。同時にガス流量計を用いたバイオガス生成量の測定及びガスクロマトグラフを用いたガス組成分析を実施した。その結果、1日あたり2.3 Nm3の水素ガス生成に成功した。また、バイオリアクター内にて増殖した微生物群集の16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンス解析も実施した。その結果、バイオリクター内にてメタン生成菌の増殖が阻害され、一方、多様な水素発生型発酵細菌が増殖していたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症拡大の影響によって、静岡市内の温泉用掘削井の調査及び1トン型バイオリアクターの構築に遅れが生じた。また、現場での微生物培養実験を自粛せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、メタン生成リアクターよりも約10℃高い温度でリアクターをインキュベートすることにより、地下水に含まれる水素資化性メタン生成菌の増殖を特異的に阻害し、水素発生型発酵細菌のみを増殖させる水素ガス生成リアクターの構築に成功した。さらに、リアクター内で増殖した微生物群集の16S rRNA遺伝子を網羅的に解析し、水素ガスの生成に関与した微生物分類群を特定できた。 令和4年度は、水素ガス生成型バイオリアクターにて増殖した微生物群集からRNAを抽出する。次に、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析により全RNAを網羅的に解析し、水素ガス生成において重要なタンパク質及び代謝特性を明らかにする。 また、付加体の深部帯水層に由来する嫌気性の地下水および微生物群集を利用した水素発生型リアクターについての研究成果を学術論文にまとめる。さらに、静岡生命科学フォーラムが主催する静岡ライフサイエンスシンポジウムや日本微生物生態学会年次大会にて研究成果を発表する。
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