研究課題/領域番号 |
20H04386
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日高 平 京都大学, 工学研究科, 講師 (30346093)
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研究分担者 |
戸苅 丈仁 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (60803830)
中村 真人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (60414463)
山岡 賢 琉球大学, 農学部, 教授 (70373222)
吉田 弦 神戸大学, 農学研究科, 助教 (60729789)
佐野 修司 摂南大学, 農学部, 准教授 (00443523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メタン発酵 / バイオマス / 浄化槽汚泥 / 模擬生ごみ / 光照射培養 / 栽培試験 / バイオガス / 下水汚泥 |
研究実績の概要 |
農業集落排水汚泥の性状について調査したところ、有機物(VS)/固形物(TS)比は概ね0.8程度であった。現場での貯留中の分解により、VS/TS比がやや低下する可能性が考えられた。メタン発酵実験でのバイオガス発生率は、0.1~0.2 NL/gVS-added程度であった。VS/TS比とバイオガス発生率の関係は他の排水処理汚泥と同様であることが確認された。 模擬生ごみの連続的に投入する貯蔵実験を、乳酸発酵と競合する反応を引き起こす恐れのある他の細菌源として浄化槽汚泥を添加する条件も含めて行い、乳酸発酵環境の安定性を検証した。その結果、反応器内のpHが3.5前後に低下し、微生物による固形性有機物の分解が抑制された。生成された有機酸として乳酸が大半を占めており、酢酸はわずかであった。これより、乳酸発酵と競合して有機物の分解を引き起こす懸念のある浄化槽内の他の細菌源を添加しても、安定して乳酸発酵環境が維持されていたと考えられた。嫌気性消化実験にて、溶解性成分を除いた乳酸発酵後の模擬生ごみからのバイオガス発生量は、乳酸発酵前の模擬生ごみからの量に対して8割程度以上であった。乳酸濃度および共存物質濃度からpH値を算出するモデルを作成したところ、計算値は概ね実験値に一致した。 光合成微生物の培養実験として、集積培養液を植種して下水汚泥試料との混合培養を試みた。菌叢解析によるRhodospirillaceae科の構成率(%)と真正細菌遺伝子数に対するpufM遺伝子数の関係を比較したところ、両者の間の関係は概ね一定であった。またpufM遺伝子数とカロテノイドの測定結果が関連していた、下水汚泥試料との混合培養におけるRhodospirillaceae科の光照射条件下での挙動は、pufM遺伝子数やカロテノイドの分析で把握可能であると考えられた。また、農地に施用された汚泥の有機物形態の評価のため、土壌からのリン酸緩衝液抽出や加温抽出などの方法論の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浄化槽汚泥の特性を明らかにするため、下水道、農業集落排水処理汚泥、浄化槽などの異なる処理技術間で比較することで、汚泥性状やバイオガス発生率などの関係を一般化した。貯蔵実験では、適切な植種を行うことで、生活排水由来の微生物混在下でも乳酸発酵が安定しバイオガス発生率を確保できることが示された。下水汚泥試料での光照射培養実験では、光合成微生物の増殖が観察された。これらより、提案システムの実現可能性が示され、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
乳酸発酵による浄化槽汚泥および生ごみ収集の一体化を目的としながら、生活排水処理汚泥からのエネルギー回収の視点で適用範囲の拡大を試みる。生ごみ以外の廃棄物系バイオマスも対象としながら、乳酸発酵による浄化槽内貯留および前処理手法の開発として、引き続き貯留実験および貯蔵した後の模擬生ごみのメタン発酵実験を実験室規模の反応器を用いて行う。生活排水由来の微生物を含む実験も行い、乳酸発酵条件を適切に維持することで、生ごみの腐敗を極力防止しエネルギー価値を保存する管理手法を提示する。 光合成微生物によるメタン発酵汚泥の肥料価値向上に向けて、肥料高品質化技術の開発を試みる。集積培養液を用いて、人工培地や実際のメタン発酵汚泥との混合条件下での培養実験を、人工気象器内で行う。光合成微生物の増殖状況を把握する方法として、カロテノイドや遺伝子解析を活用しながら、実験における対数増殖時の比増殖速度などを算出し、培養条件が比増殖速度に及ぼす影響を明らかにする。メタン発酵施設におけるヒアリング調査を行いながら、適用に際しての課題を議論して、その促進に向けた手法を検討する。
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