研究課題/領域番号 |
20H04429
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
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研究分担者 |
河野 佳春 弓削商船高等専門学校, 総合教育科, 准教授 (00224816)
小野 林太郎 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (40462204)
小河 久志 金沢星稜大学, 人文学部, 准教授 (50584067)
鈴木 佑記 国士舘大学, 政経学部, 講師 (60732782)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (90447988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海辺居住 / 津波 / レジリエンス / 海民 / インドネシア / タイ / バジャウ / モウケン |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大のため、研究活動の軸をなすインドネシアおよびタイにおけるフィールドワークを実施することができなかった。国内においては7月までに、ズームやメールを使って調査計画の打合せをおこなった。しかしその調査計画は、2021年度に持ち越された。他方、オランダ植民地期に遡るインドネシアの津波被災史に関連する歴史資料の収集・分析や、2004年インド洋大津波以後のインドネシア、タイ両国における津波対応の政策や制度に関する資料調査は進めた。2021年3月には、宮城県気仙沼市において、現地の津波被災と復興に関する観察調査をメンバー合同でおこない、それにあわせて研究会を実施した。研究会では、2021年度に、「周縁海民」班は対象社会の津波被災に連動した社会文化動態に関する文献リスト、「制度・政策」班は対象国の自然災害対応に関わる政治過程の基本資料のリスト、「歴史過程」班は対象海域の津波等の海洋自然災害史の基本年表等、可能な限り関連する資料調査を進めることを確認した。インドネシア(ハサヌディン大学)・タイ(チュラロンコン大学)の研究協力者とは随時連絡をとり、現地調査に向けた情報交換をおこなった。 2022年8月および3月には、上記のとおり持ち越された津波被災史に関する調査をインドネシア・スラウェシ島のタカボネラテ、パル市、バンガイ島で、タイ南西岸プーケットでおこなった。タカボネラテは1991年に、パル市は2018年に、バンガイ島は2000年、タイ南西岸は2004年に、それぞれ津波災害を被っている。他に、国内では引き続き宮城県気仙沼地区において2011年の津波災害後の復興過程に関する調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため、研究活動の軸をなすインドネシアとタイでのフィールドワークおよび現地資料調査を実施することができなかったことがもっとも大きな理由である。2020年末時点では、日本国内で入手しうるインドネシアの津波被災史に関する歴史資料の調査や、2004年インド洋大津波以後のインドネシア、タイ両国における津波防災の政策や制度に関する資料調査を進める段階にとどまった。インドネシア・タイの研究協力者とはメール等で随時連絡をとり、情報交換をおこなった。しかし、今年度は、かれら自身もフィールドワークをおこなうことはできずにいた。さらには、現地の研究協力者ないしその家族が新型コロナに罹患するケースさえあった。こうした状況のため、本課題は部分的な資料調査と国内の津波被災関連地域での比較調査をおこなうにとどまらざるをえなかった。 以上が2021年度末までの状況であった。こうした状況を補うために2022年度には上記のとおり現地調査をおこなった。しかし、調査地では夏期までに新型コロナ感染状況に対する警戒感が弱まっておらず、また現地協力者との日程調整がとれず、本格的な調査を実施するまでにいたっていない。またインドネシアの場合、8-9月の段階では、現地の大学もポストコロナ状況への対応に追われており、現地協力者と協力しながらのフィールドワークは予備的なものにとどまらざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、インドネシア、タイのいずれにおいても本格的な調査は2023年度からようやく可能になる。2023年度は、現地協力者と事前に十分に打合せをおこなったうえで、これまでの不足を補いつつ現地調査を進める予定である。7月には、モノと人のフローに焦点をおいて東南アジア史を再検討することを目的とするシンポジウムを、東南アジア学会と合同で東洋大学において開催する。同シンポジウムでは、東南アジアにおける海産資源利用がいかに海民社会の生成・維持と関係し、同社会のレジリエンスの基盤をなしていたのかが論じられることになるだろう。このシンポジウムには東南アジア史研究の第一人者であるオーストラリア国立大学のアンソニー・リード氏を招聘し、上述の目的に関する意見交換をおこなう。1月の東洋大学アジア文化研究所の年次集会では、インドネシアとタイでの調査をふまえた成果報告をおこなう予定である。
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