研究課題/領域番号 |
20H04435
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
Sharpley Richard 和歌山大学, 国際観光学研究センター, 特別主幹教授 (60863082)
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研究分担者 |
加藤 久美 和歌山大学, 観光学部, 教授 (30511365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダークツーリズム / 負の遺産 / 和解 / 理解 / 平和 / 観光商品 |
研究実績の概要 |
今期調査では以下の事例に焦点を当てた。 大久野島:現在この島は、ラビットアイランドとして知られるが、1927年から太平洋戦争終結までは毒ガスを中心とした化学兵器の秘密生産地であった。現在も発電所跡などその痕跡が残るが、島での化学兵器の生産は、主に小さな毒ガス資料館にある。この事例では、博物館やその他の解釈を通じて、この暗い過去と今日の「ソフト」イメージをどのように調和させる試みがなされているのかについて注目した。 山口県周南市大津島:太平洋戦争末期、日本軍は進撃する米海軍に対して特攻隊という戦術を発動した。作戦は主に航空戦であり、日本の若い「神風」パイロットが派遣され、爆薬を積んだ航空機をアメリカの艦船に飛ばすというミッションであった。特攻隊員は、鹿児島の知覧特攻平和会館を中心に、日本各地に慰霊碑が建てられている。一方、 有人魚雷(回天)も投入されたが、その成功率は神風攻撃に比べればはるかに低かったとされる。この事例では、神風と回天のパイロットがどのように表現、記念され、その結果、これらの施設が平和と和解のメッセージをどのように推進するかに焦点を当てた。 ハンセン病療養所:1907年「癩予防に関する件」にて放浪患者の隔離、1931年隔離対象が拡大され、1953年には、「ハンセン病の蔓延を防止し、医療を提供し、ハンセン病患者の福祉を増進し、もって公衆衛生に寄与する」ことを原則とする「らい予防法」が制定された。しかし、実際には患者に対する非人道的な強制隔離と差別が継続された。1996年の法律廃止、さらに2001年元患者への補償を立法化、2019年には、家族を補償するための新しい法律が制定された。 この事例では、ハンセン病患者に対する差別がどのように、なぜ起こったのか、現存する療養所や国立ハンセン病資料館での調査を通じて、その差別と向き合い、説明する方法を探ることを中心とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本における困難な歴史や暗い歴史に関連する観光地や観光地のケーススタディで構成される。各事例において、実証的な調査(現地視察やインタビュー)、文献調査の両方に基づき、特定の出来事や歴史が観光客に提示され、解釈される方法に注目した。現代の論争や議論と関連させながら、各地域が観光を通じて相互理解や平和、和解にどの程度積極的に貢献しているか、あるいは一方でどの程度負の側面を維持しているかについて結論を導き出す。この計画に沿って、事例研究を進め、同時に書籍執筆を進めていくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
事例研究を続け、同時に書籍の構成を確定し、執筆を進める。学会、研究会等においての発表の機会をもち、「ダークツーリズム」の理論的構築、実例の充実を図っていく。
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