研究実績の概要 |
定在波型ハードX線レーザーの高精度制御とその応用を目指し、まずは、その動作機構の解明を狙ったシュミレーションコードの開発を行った。ここでは、実験で得られているブラッグ共鳴に一致した場合での発振スペクトルに表れる特徴的なスペクトル構造に注目し、それが説明できる計算機モデルを構築した。具体的には、動的な要素を持つ分布帰還形レーザーで使用されている、初期にバースト的に発生した種光が、いくつもの格子の等間隔な回折現象を受けながら利得を持って増幅されていくモデルとなっている。一般に、光の領域では、ミクロン程度の格子状態とμm程度の波長の光の相互作用を考えればいいが、X線の場合には、その周波数も2x10^18[Hz]で、格子間隔も0.15nmと3桁以上精度が高いものが必要となり、そのままでは膨大な計算時間になってしまう。そこで、実際には、利得幅が1μm程度で、その領域が励起レーザーの進展とともに前進していくことを、原子準位のレート方程式と1次元のX線の伝播方程式を基としたコードで、明らかにし、その利得の時間・空間分布を使って、X線の波動方程式を解く方式を採用した。これにより、実験のパラメータ程度の大きさでのスペクトル計算が可能になった。 また、実験では、これまで行われていた5水和硫酸銅結晶のhkl=(5, 0, -7)の方位に対するブラッグ条件だけではなく、(2, 7, -6), (6、0、3)といった条件でも同様な共鳴状態を表すスペクトルが観測できることを突き止めた。
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