研究課題/領域番号 |
20H04452
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
米田 仁紀 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (00210790)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | X線レーザー / 定在波型レーザー / ブラッグ共鳴 / コヒーレントX線光学 |
研究実績の概要 |
今年度は、新しいBragg型結晶の高精度化に向けて、特に、制御を崩す要因であるASEを低減させる機構とその実現を試行する実験を行った。このXFEL励起X線レーザーは、他の媒質と異なり桁違いに大きな利得を持ち、わずか数10μmで雑音レベルの種光を飽和レベルまで増幅してしまう。一方、180°回折のBragg型結晶を用いた提案しているレーザー動作では、定在波は時間的に後半で立ち上がることになり、先頭を走ってしまうASEを抑える効果が必要になる。これらは、実験的に機構をチェックすることができないので、理論モデルを作り、その計算コードを開発、それを元に出力特性を評価するようにした。その結果、単純に利得を進行波励起で作らせると、どうしても先行したパルスの増幅が主となってノイズが大きくなってしまうこと、それを可飽和吸収過程と利得の飽和を組み合わせ、比較的長い利得領域の長さを確保させることで、定在波側にも十分な利得を確保でき、その結果、レーザーの制御性が改善することなどが明らかになった。これを実現させるには、高品質な結晶とその角度のアライメント精度を上げることが必須である。そのため、数か月かけ5水和硫酸銅結晶を育成し、5cm超の大きさまできれいな状態で育成が可能な装置を作り、さらに、ターゲットにする際の平面精度を研磨により上げるように工夫した。これらを受けてSACLAで実験した結果、良好なスペクトルをえられるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機コードの開発には、比較的長い結晶長の中で、ハードX線のコヒーレンスを計算するために10^-18以下の時間分解能、0.1nm以下の空間分解能で行う必要がある。これと原子系のダイナミックスを同時に解こうとすると、計算資源をかなり使うことになり、現実的にワークステーションで動かすレベルではなくなってくる。具体的には単純な見積もりで1年かって1バッチが計算できるような状況になっている。そのため、原子系を計算させ 入射XFELで利得が発生し、その利得部が伝播する様子を計算させることと、発生したX線を波として計算さえ発振スペクトルを評価するコードを分け、後者をポストプロセスのような形で計算できるように改善した。また、利得分布もコード内で不活性層などを入れることで制御できる可能性があると考え、そこにも対応できるようにコードを改良している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに設計されているBragg型回折ハードX線レーザーで、端的な制御された出力を実現することが第一の目標になる。このためには、0.1K程度の温度安定性も必要になり、そのためのターゲットホルダーの改造も必要になる。また、計算機コードをフルに動かして、利得分布や利得長積を変えることで出力がどの程度変化するかも計算させ、それをアーカイブし、得られている実験データと比較していくことが重要になる。
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