研究課題/領域番号 |
20H04460
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
古屋 貴章 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (70156975)
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研究分担者 |
山本 将博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (00377962)
金 秀光 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20594055)
小林 幸則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (40225553)
東 直 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (70793959)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超高圧電子顕微鏡 / 超伝導高周波空洞 / 高周波加速 / 光陰極電子銃 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、超伝導高周波空洞の優れた特性を応用した超高圧透過型電子顕微鏡を実証しようというものである。その手段として光陰極を用いた短パルス電子銃、エネルギー分散を極力抑えるための2モード超伝導加速空洞とそれを冷却するためのクライオスタットおよび高周波制御回路を新たに用意し、既存300kV電子顕微鏡の熱電子銃部をそれらで置き換え、ビーム収束系はそのまま使うことで顕微鏡機能を実証することを考えている。初年次は、完成した光陰極型電子銃の単体でのビーム特性試験の準備を進めた。電子の入射電圧としては60kVを想定しており、光陰極型電子銃の放射線対策を完了して現在は100kVの高圧電源の制御回路を準備している。空洞本体に関しては、初年次に冷却試験で周波数および性能を確認した。さらに2つの共振モードの同時制御のための高周波回路の設計をしてその必要な構成部品を調達した。2年次はその部品を使って高周波制御系を構築し実際に空洞を冷却して動作を確認した。周波数の制御にはFM変調と同時にピエゾ素子を用いたメカニカルな周波数制御を用意しているが、ともに動作は良好であった。クライオスタットについては1年次に設計したヘリウム容器概要に基づき、2年次にはその部品製作に着手してほぼその準備を終えている。また実証のための既存電子顕微鏡については、電子銃を乗せ替えるための準備を進め、アライメントを損なわない様に慎重に電子銃部を取り外した。しかし既存の高圧電源の出力300kVを陰極保護のために100kVに制限する必要があり、その対策を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光陰極電子銃部は完成しておりそのビーム特性試験を計画したが、既存高圧電源の上限値制御が時折暴走し過大電圧が発生することが判明し、その原因究明と修正が必要になった。結局は修正不可能との結論に至り別の電源への切替えることにしてその制御回路の改修を始めている。そのためビーム試験は3年次に行うことになる。空洞本体については、2モード制御のための高周波系が完成し冷却試験を実施した。周波数制御としてのFM変調およびピエゾ素子を使ったメカニカル制御の両方の動作確認はできた。しかし課題として2つのモード分離のためのフィルターの容量の不足が残った。このための回路修正が必要になった。Heクライオスタットについては、部品はほぼ準備できて、空洞の性能試験が終了するのを待っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は超伝導加速空洞を用いた電子顕微鏡試作機の完成であり、3年次は電子銃部のビーム試験ののち、既存顕微鏡へ搭載してビームアライメントとモニターの整備を行う。空洞に関しては低温計測を続けて2モード制御回路の改造を行い、その完成を待ってクライオスタットへの装着を行う。また液体Heを中継する接続部の製作を開始して全体の冷却を試みる。3年次は最終年度であり、加速空洞部をクライオスタットに装着した上で顕微鏡本体に搭載し冷却する。60kVの電子ビームを入射して300kまでの加速試験を行い、そのエネルギー分散を観測する予定である。
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