研究課題/領域番号 |
20H04463
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
渡邊 功雄 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (40260195)
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研究分担者 |
妹尾 仁嗣 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30415054)
足立 匡 上智大学, 理工学部, 教授 (40333843)
松浦 弘泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40596607)
石井 康之 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (90391854)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミュオン位置計算 / 第一原理計算 / 超微細相互作用 |
研究実績の概要 |
<<ミュオン位置計算手法開発>>前年度にPhys. Rev. Researchに公表した研究成果を異なった計算手法での検証を行った。特に最終的な結果を左右しかねない電子相関関数にかかる確認作業を行った。LDAやPBEなどの計算量が比較的少なくて済む電子相関関数は、当初予測したようにLa系銅酸化物の絶縁状態を記述するには不十分であることが判明した。一方、最新の電子相関関数であるSCANに関しては、計算プログラムのバージョンが古く利用できないことが判明した。このため、計算プログラムの至急のアップグレードの検討を行った。 <<パイロクロア酸化物>>実験データが不足しているために、簡単な計算模型で模擬的な計算を行い、計算手法の方針を探った。パイロクロア酸化物はf電子を含むために、通常の第一原理計算を行ってもかなりの計算規模になることが明らかになった。このためまずはミュオンを含まない状態でのユニットセル模型に関する計算を行い、既に報告されている金属絶縁体転移が本計算手法から説明できるかどうか試みた。ユニットセルを用いた計算においても比較的大規模な計算になることがわかった。計算時間を確保しつつ次年度へ向けて順次成果を積み上げていく予定である。 <<有機伝導体の電子状態>>結晶内に広がるπ電子雲が拡大する原因を解明するため、より詳細な計算を行った。その結果、結晶内に広がる電子スピン成分の多くが有機伝導体が持つ磁性スピン成分からの流れだしであることが判明した。この磁性体スピンの空間的広がりの原因を求めるため、分子軌道間の結合状態の計算を進めることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による行動制限が緩和され、ミュオン実験や議論などを比較的自由に実施できる環境にはなった。しかしながら、世界的な貨物輸送にかかる人材不足等が強く影響し、加速器のメンテナンスや運用に必要な電子部品や消耗品の納品等が大幅におくれているために、ミュオン実験の大幅な遅延が見込まれている。計算科学研究は推進することは可能でも、計算結果を検証するための実験データの取得が遅れている。これにより、全体の計画の進捗も遅れつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ミュオン実験に用いるための試料合成と評価を進めるとともに、ミュオン施設の再稼働を待つ。分担者の研究設備も積極的に活用し、試料合成作業を効率的に進めていく。これに平行してミュオン位置計算も進め、実験結果を得次第、詳細な計算条件の修正とミュオン実験の結果を解析する準備を整える。特にミュオン位置計算に必要なユニットセルの電子状態を記述するための格子定数と自由エネルギーの最適化を優先して計算する。これによりミュオン実験の結果をただちに利用し解析を行える下準備を整えていく。対面での議論をより多く活用するとともに、海外の研究協力者との議論も開始する。これまで実施できた実験結果と計算結果を可能な限り公表・発信するために、国内外での研究会や会議等での成果発表の機会を探る。
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