最終年度の今年度は,色再現性の向上の技術でさらなる成果を得た.従来は画像をRGBなどの各チャンネルに分割して,それぞれのチャンネルに対してパターンを生成していたが,これでは十分な色再現性を得ることができなかった.これに対して,局所領域に対するパターンを生成したときにどのような色が表現されるかを保存したデータベースを構築しておくことで,入力画像で与えられる任意の色に対応する最適パターンを検索することができるようになる. また,実物からの織物パターン推定においても,従来は1枚の画像の画角に収まり,かつ,解像度の低い画像からのパターン推定しかできなかったものが,複数の画像をタイル状に貼り合わせて推定結果を統合する手法を確立し,任意の面積の織物に対してパターン推定を行うことができるようになった.さらに,パターン観測から着想を得た,新しい織物パターンの生成法についても,研究を進めている. 画像生成 AIが急速に進化しており,本研究の範囲にとどまらず,デザイン業界全体の作業工程までもが変わりつつある.本研究課題の中でも,画像生成AI の効果的な利用方法の検討を進めた.織物パターンとして実現可能な画像は限られており,色の変化が平坦で繰り返し可能である必要がある.プロンプトエンジニアリングによって,この種のパターンの生成が実現できてきている.この成果を新しい製品開発に導入できるかどうかについて,地域織物業者との議論を進めている.生成AIに,織物パターンならではの制約や織り上がりの印象などを考慮して画像生成させるまでには至っておらず,さらなる改良が必要である.この部分については,研究期間終了後にも継続して進めたい. 本研究課題で得られた成果は,国際論文誌などで発表したほか,製品が発売されたり,招待講演などで紹介をしたりして,地域産業のみならず国内外にも発信することができた.
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