研究課題
本研究の目的は、「現代まで継承されてきた伝統産業を日本のデザインのリソースとして発展的な活用が可能なかたちでアーカイブし、いかに産業として成立させつつ未来に残すか」という問いに対して、東京の染色型紙を対象とし、文化の継承と発展の視点からデザインの創造的実践活動のなかで活用可能なアーカイブに必要な条件や構造、内容項目、運用のデザインを考察し、プロトタイプを提示することである。2023年度は、下記の3つのタスクに取り組んだ。1. 型紙のデータベース化:データ化した2000点余りの型紙をデータベースに収録して項目を設定し、型紙データを1枚ずつ目視して模様のタイプ、年代、染色工程に関する情報、型紙の由来などの情報を手作業で入力しながら、入力項目を調整した。2. デジタル技術を用いた型紙の再生産:型紙を手彫りする熟練の職人の減少を踏まえ、データ化した型紙をグラフィックソフトを用いてトレースしてベクターデータにし、カッティングプロッターに取り込み、合成紙に出力して型紙を再生産する実験をした。そのプロセスを通して、職人の作業や思考の原理を読み解くことが、デジタル上で作業する際にも有効であることがわかった。3. AIを用いた画像解析と実用的な機能のデータベースへの搭載:上記1の作業では、データベースに取り込んだ型紙を目視し、手作業で情報を入力したが、その際には型紙の模様を読み解くための勘や経験が有効であるとともに、逆に経験がもたらす先入観やバイアスが影響して新たな発見を妨げることもある。そこで、実験的にAIを導入し、機械的に画像解析と描写記述を行いその結果をデータベースに掲載するシステムを開発した。部分的に実装したデータから人間の認識とは異なる角度からの描写記述や模様の分類の可能性が見えた。AIの導入には作業の効率化というよりは、むしろ人間が気づかなかった新たな視点をもたらす効果が期待できる。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the 10th Congress of the International Association of Societies of Design Research (IASDR 2023)
巻: 2023 ページ: xlix
10.21606/iasdr.2023.703