研究課題/領域番号 |
20H04486
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山田 優 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (70645001)
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研究分担者 |
中澤 敏明 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 客員研究員 (10828552)
松下 佳世 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 准教授 (90746679)
長沼 美香子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80460012)
石塚 浩之 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40737003)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 翻訳プロセス / 訳出プロセス / Trados Studio / 通訳 / ポストエディット / TPR-DB / Translog / アイトラッカー |
研究実績の概要 |
プロ翻訳者が翻訳作業を行う環境では、多くの場合、翻訳支援ツールが使われる。代表的なものにTrados Studioがある。本プロジェクトの大目標は、1) Trados Studioを使った作業環境で、翻訳者の訳出プロセスのデータ(キーボード操作、アイトラッキング等)を記録できる研究用ツールの開発、2) 同ツールを用いた実験を通しての訳出プロセスデータ収集、そして3) は、1)と2)の一般公開と学際的研究のための展開および研究基盤構築である。2021年度は、当初の予定どおり、1)と2)を完了することができた。記録用データツールは「Trados-to-Translog-II」とした。また、同ツールを使ったデータ収集も一定程度完了できた。 また、Trados Studio以外の、特殊な作業における訳出プロセスを見るために、同時通訳、機械翻訳+ポストエディット、また訳文の読み(読者の読み)のプロセスデータの収集と分析も行った。さらに、訳文の読みのプロセスにおける「困難さ(difficulties)」の分析のために、外国語能力(教育)とプロ翻訳の違いを考慮したトピックも考察した。昨年度は新型コロナウィルスが原因で、ツール開発やデータ収集が思うように進まなかったが、2021年度はその遅れを挽回できた。 研究業績としては、主に特殊な環境における訳出プロセスの分析に関する学会発表と招待講演を行った。ツールとデータの公開と展開に関しても、今年度で進捗したので、2022年度(最終年度)に国際学会での発表およびワークショップを実施できる見通しが立った。尚、論文、岡村・山田(2020)「『順送り訳』の規範と模範:同時通訳を模範とした教育論の試論」が日本通訳翻訳学会新崎賞(奨励賞)を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は上述の通り、1) Trados Studioを使った環境で、翻訳者の訳出プロセスのデータ収集ができる研究用ツールの開発を完了し、2) そのツールを使ってデータを収集した。また特殊環境下における訳出プロセスデータの収集(通訳、ポストエディット、訳文の読みのプロセスデータの収集)も行った。1) と2) が完了したことは、本プロジェクトの大きな目標の1つを達成できたと考える。また特殊環境下におけるデータ収集は、本研究が中心的に扱ってきた「熟練翻訳者の訳出プロセス解明」のための分析と研究手法が、同時通訳者や外国語学習者の言語理解プロセスの研究とも接合し、学際的基礎研究基盤の発展に貢献できることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度(最終年度)は「Trados-to-Translog-II」ツールおよびツールを使って収集したプロセスデータの公開を行う。本プロジェクトが目標として掲げる「翻訳研究や自然言語処理、言語学などの学祭的研究(次世代の機械翻訳開発も含む)のための基礎研究の共有基盤構築」に向けて、国際学会での発表およびワークショップを実施する。また、国内向けのシンポジウム開催も予定している。前者については、すでに開催の見通しが立っている。通訳翻訳研究分野を越えて他の分野での同ツールおよび収集データの研究利用の促進を目指す。
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