研究課題/領域番号 |
20H04490
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 裕子 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (60621670)
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研究分担者 |
ユ リラ 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (60760709)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アイトラッキング / 霊長類 / リズム知覚 / リズム運動 / 音楽性 |
研究実績の概要 |
ダンスや合唱といった音楽は世界中の民族や文化で取りいれられており、ヒトに普遍的なコミュニケーションだと言われているものの、その進化的な起源はまだ十分に明らかにされていない。本研究では、ヒトとヒト以外の霊長類を対象に音のリズムやメロディに対する反応や予測能力を調べることで、音楽性の進化的基盤を解明することを目的とする。本年度は、昨年度に引き続きチンパンジー、テナガザルを対象に、音刺激の予測について、アイトラッカーを用いてヒトおよび類人猿2種でデータ収集を行った。聴覚オッドボール課題を用いて、音の質(高さ、ノイズ音)が異なる刺激が提示された際の、瞳孔の拡張について調べる。テナガザルについては、2個体が安定してデータ収集が取れるよう訓練でき、今年度はさらにもう1個体(合計3個体)のデータ収集を行った。 また、チンパンジーを対象に、ディスプレイで観察された聴覚リズムを分析しその特徴を明らかにした。さらに実験室において、プレイバック実験によってリズム音に誘発されるリズム運動の特徴についても、時系列的な変化を分析するため反応記録した。 さらに本プロジェクトに関係した共同研究から、聴覚刺激における音質の感受性とそれに関連した視覚刺激の記憶課題についても行った。タッチモニタに同時に提示された複数の視覚刺激のうち同じ刺激を選択すると刺激が消え報酬が得られるという文脈において、視覚刺激を選択する際のフィードバック音を操作することで、課題の成績にどのように影響を与えるかを調べた。今年度はまず視覚刺激のみを用いて、チンパンジーを対象に訓練を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テナガザルを対象にした実験については、他個体が同室した状況での計測となるため、提示する音刺激の音圧を調整しながら引き続きデータ収集を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、引き続きテナガザル3個体およびチンパンジー8個体を対象に、聴覚オッドボール課題における瞳孔の変化についてアイトラッカを用いて計測する。瞳孔の変化を分析できるだけの注視時間を確保するために、視覚刺激(風景写真など)を提示しその間に音刺激を再生する。刺激は異なる音刺激間で同じものを用いて、順番はランダムに提示する。テナガサルとチンパンジー8個体のデータ収集と並行して、同様の手続きでヒト被験者の実験を実施する予定である。 また、上記の実験とは別に実験室でのプレイバック実験を用いて、聴覚刺激に誘発されたリズム運動の時系列的な特徴も分析する。これまでの結果から、放飼場におけるチンパンジーの聴覚ディスプレイは、パントフートなどで見られる時系列的な特徴(Introduction, Development, Climax, Let-down)と類似したものが見られることがわかっている。音刺激によって誘発されたリズム運動についても、同様の要素に分類される特徴がみられるのかについて、実験を行う。 最期に、聴覚刺激における音質の感受性とそれに関連した視覚刺激の記憶課題についても聴覚フィードバックを加えたテストセッションを行う。テンポ、周波数および音質を変化させた400ms程度のフィードバック音を各視覚刺激が提示されると同時に提示し、課題遂行の際の成績にどのように影響を与えるかについて調べる。聴覚刺激が視覚刺激をマッチングさせる課題に寄与しているのであれば、聴覚フィードバックが無い条件よりも成績が高くなることが予測される。また、弁別がしやすい聴覚刺激の組み合わせの方が、そうでないものよりも、成績が高くなることが予測される。
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