研究実績の概要 |
本研究では、ヒトとヒト以外の霊長類を対象に音のリズムやメロディに対する感受性や予期的反応を調べることで、音楽性の進化的基盤を解明することを目的として研究を行ってきた。最終年度は、引き続きテナガザル3個体およびチンパンジー8個体およびヒト被験者を対象に、聴覚オッドボール課題における瞳孔の変化についてアイトラッカを用いて計測した。瞳孔の変化を分析できるだけの注視時間を確保するために、視覚刺激(風景写真など)を提示しその間に音刺激を再生した。 また、上記の実験とは別に実験室でのプレイバック実験を用いて、聴覚刺激に誘発されたリズム運動の時系列的な特徴も分析を行った。全身の揺れ(swaying) や足踏みといったリズム運動の誘発に加え、徐々に速度が速くなり発声といったディスプレイのクライマックス時に見られる反応が観察され、時系列的な構造はパントフートで報告されている “Introduction”, “Development”, “Climax”, “Let-down” の要素があることが確認された。 国際共同研究としては、聴覚刺激における音質の感受性とそれに関連した視覚刺激の記憶課題について、聴覚フィードバックを加えたテストセッションを行った。テンポ、周波数および音質を変化させた400ms程度のフィードバック音を各視覚刺激が提示されると同時に提示し、課題遂行の際の成績にどのように影響するか条件間で比較した。チンパンジー2個体について、テストセッションは継続して行っている状況だが、1個体に関しては聴覚フィードバックが提示される条件については、探索的な行動が頻繁に見られており、他の条件に比べてエラーが多い傾向が見られた。
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