本研究では、腎ストローマ前駆細胞培養法の開発と、腎組織への灌流可能な血管網の構築を試みた。 まず前者では、腎臓の3種類の前駆細胞のうち、これまで未確立であったストローマ前駆細胞の分化誘導法および拡大培養法をマウスとヒトの両細胞で開発した。これにより、3種類の腎前駆細胞すべてについて、高純度・高品質・高効率な前駆細胞の供給が可能となった。 次に後者については、工学的・生物学的な知見とアプローチの融合により、外部灌流回路とつながった血管様組織から腎臓組織への毛細血管網の伸展を達成した。まず、工学的に血管を構築し、そこからまずマウス胎児腎臓への血管新生を試みた。血管様組織・培養環境に関する条件の血管新生への影響を調べ、これらの最適化を試みた。工学的に作られた血管から腎臓内の糸球体近傍までの血管新生が達成され、また新生に関する条件間の比較検討も行うことができた。これら結果より、本実験系は、生体外での腎組織への血管新生の評価系として機能することが認められた。一方、本実験系では血管新生が始まる日数に生体内との乖離が見られ、培養条件等にさらなる向上の余地がある。このため、今後の展望としては腎臓を配置してから1日程度の短期間で血管新生が開始する培養系の構築を目指す。 本研究で最適化された血管組織上で、胎児腎臓中のどの細胞種・構造が血管網配備に必要になるかを検討し、それら知見を反映したオルガノイドを作製・血管組織上へ配置することで生体内に近い血管網配備の達成が期待される。
|