研究課題
本研究の目的は、超音波を利用する新手法――音響誘起電磁法(ASEM)法――を用いて、生体組織における圧電性と強誘電性を明らかにし、医療診断への可能性を追求することである。生体組織における圧電性の測定は、ほとんどの場合、十分に乾燥させた組織片に限られていたため、医学的関心に向けた研究は困難であった。近年我々が開発したASEM法の特徴は、(i) 生体環境に近い湿潤した組織や臓器の圧電性を評価できる、(ii) 超音波走査により圧電分布を画像化できる、ことである。2022年度の成果を以下に記す。1.超音波シンポジウム(USE)にてASEM研究の基調講演を行い、JJAP Progress Reviewとして2022年度の成果を含むこれまでの研究業績を論文にまとめた。2.生体組織の圧電分極の異方性と配向性の相関を確認:大腿骨皮質骨、アキレス腱、骨格筋、大動脈壁について、圧電分極の異方性を明らかにした。骨、腱については、コラーゲン配向方向を1軸対称軸とする圧電分極特性がおおよそ得られ、圧電性と配向性の関係性が確認された。筋組織においても1軸対称的な異方性が確認されたが、骨、腱に比べて分極は小さい。大動脈壁に関しては、血管周方向の配向性を仮定した特性とは異なる分極異方性が観測され、より詳細な分析が必要である。3.受信系の開発:外来ノイズを軽減し、分極の向きを特定する差動アンテナ受信系を開発し、低ノイズに圧電分極の向きと大きさを測定することが可能になった。本受信系について特許申請を行った。4.アレイプローブによるヒト測定の実現:圧電分極に起因するASEM信号を増大するために、アレイプローブによる非球面波照射を考案し、特許申請を行った。実験の結果、予想どおり、ASEM信号は4倍以上に増大し、信号・雑音比が改善した。上記受信系と組合せることにより、橈骨および腱のヒト測定が可能となり、エコーBモードとASEM断層像の同時計測が可能となった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: - ページ: -
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http://web.tuat.ac.jp/~ikushima/index_j.html