研究実績の概要 |
血管周囲腔(PVS)における脳脊髄液(CSF)の脈波依存的な流れを数理モデル化し,テスト解析を終えた.CSFは,マウスを用いた先行実験[Mestre et al., 2018, Nat. Commun., 9:4878]の知見に基づき,非圧縮ニュートン流体としてモデル化し,脳動脈の脈動によってCSFの流れが駆動される状況を想定した.この解析によって,直径100マイクロメートルの脳動脈では,その直径の1%から10%程度の脈動によって,実験計測で得られた正味のCSF流れ(約20マイクロメートル毎秒)を発生できることがわかった. 一方,全脳スケールにおける老廃物除去機構の解明に向け,全脳スケールの3次元大規模脳動脈血流体解析を行った.これにより,脳血管分岐世代ごとの流体力学的因子の変化について基礎的知見が得られたと考えている. また,細胞スケールにおける脳内物質輸送問題の解析に向けた準備として,赤血球懸濁液のレオロジー解析を行い,赤血球の個々の変形特性と空間の応力場として定量される見かけの粘性の関係を明らかにした.この成果は,査読付き国際雑誌論文として報告済みである[Takeishi et al., 2019, J. Fluid Mech., 872:818-848].上述の成果は,国際的なweb科学広報紙であるAdvances in ENGINEERINGにおいても紹介された.さらに,極小流路内における赤血球の安定挙動や赤血球流動下における血小板の流動特性についても明らかにし,それぞれ国際雑誌論文として報告済みである[Takeishi et al., 2019, Micromachines, 10:199; Takeishi et al., 2019, J. Biomech. Sci. Eng., 14:18-00535].
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