研究実績の概要 |
ヒト脳動脈網の血管分岐世代毎の脈波伝ぱ動態を明らかにすることを目的に,MRI画像(Wright et al., 2013, NeuroImage, 82:170)に基づき10例の被験者個別脳動脈モデルを構築し,1次元血流解析を行った.構築した脳動脈モデルは,数mmの入口血管直径から数百マイクロメートルの出口血管直径からなる全脳スケール規模の血管ネットワーク構造である.はじめに,モデル検証として,ウィリス動脈輪(CoW)周囲の主要脳動脈の流量分配比に着目し,モデル解析結果と実験計測値(Zarrinkoob et al., 2015, J. Cereb. Blood Flow Metab., 35:648)を比較した.両者が良好に一致することから,モデルの妥当性を確認した.次に,CoWから数えた血管分岐世代ごとの脈は伝ぱ動態を血管収縮比(血管径比),流量,圧力,そして流量と血管径の比で表されるリーマン不変量として定量した.特に,実験計測されている特定の脳動脈部における血管径比は,先行の実験計測値(Nishida et al., 2011, Am. J. Neuroradiol., 32:E206; Studinger et al., 2003, J. Physiol., 550:575)と良好に一致した.本解析結果に基づき,血管周囲空の脳脊髄液流れ(CSF)が確認できる約数十マイクロメートルスケールの脳動脈血管の脈波伝ぱ動態を推測する経験式を提案した.本結果は,国内会議(日本機械学会第33回バイオフロンティア講演会)で報告し,その内容が評価されたことで若手優秀講演表彰を受賞した.本結果は現在,国際査読付き論文として投稿する準備を進めている.この他に,本年度は,国際査読付き論文発表5件,書籍発表1件,国際会議口頭発表2件,国際会議ポスター発表1件,国内会議口頭発表3件を報告した.
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