研究課題/領域番号 |
20H04505
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
栗崎 晃 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60346616)
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研究分担者 |
高田 仁実 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80641068)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 分化 / 培養 / 再生 |
研究実績の概要 |
本研究では、胃の分化制御技術を発展させて胃組織を作りだす新たな技術の開発を進めている。具体的には、成体マウスの胃組織から取り出した幹細胞や前駆細胞をin vitroで増殖させた後、成熟機能細胞へと分化させる分化シグナルを解析し、その分化能を評価するとともに、生体内で様々な機能性胃上皮細胞を再建するための技術をマウス等の動物モデルで開発することを目的としている。 初年度はまず、in vitroで増殖させた成体マウスの胃組織由来の峡部前駆細胞を表層粘液分泌細胞へと分化させる分化シグナルを解析した。成体マウス胃組織細胞のシングルセル解析のデータを利用した前駆細胞集団と表層粘液分泌細胞の遺伝子発現データの比較解析から、EGFRシグナルが表層粘液分泌細胞で特異的に活性化している可能性を見出した。実際にEGFファミリーメンバーの一つであるTGFαを胃前駆細胞集団に添加して培養したところ、多くの細胞がGKII陽性の表層粘液分泌細胞へと分化した。一方、EGFRシグナルの阻害剤の一つであるErlotinibを添加して培養すると、胃前駆細胞から表層粘液分泌細胞への分化が阻害され、Ki67陽性の増殖性の前駆細胞が増える様子が観察された。さらに表層粘液分泌細胞への分化を促進するEGFRシグナルの下流シグナルについて探索したところ、MAPKシグナルの阻害剤であるSCH772984で選択的に表層粘液分泌細胞への分化が阻害されることから、EGFR-MAPKシグナル経路が表層粘液分泌細胞への分化を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胃の様々な機能細胞への分化シグナルの解析や分化能の検証に関してはin vitroの培養条件に課題があり、分化をin vitroで再現するのに時間を要している。また、動物への移植実験に関しても技術的な課題がいくつかあり、手技的にも改善の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
胃前駆細胞の分化制御因子に関しては、表層粘液分泌細胞への分化シグナルを明らかにできたが、消化酵素を分泌する主細胞や胃酸を分泌する壁細胞など、多くの細胞種への分化因子については解析できておらず、引き続きシングルセル解析データや文献情報を元にin vitroの分化系で検討を続けていく予定である。また、胃前駆細胞を成体マウス組織に移植して成熟胃組織を作製する方法についても検討を行っている。腎被膜下や精巣などの組織への移植も行っているが、消化管への移植は既存上皮細胞の剥離や移植細胞の生着、術後のマウスの経過も含めて検討する必要があり、難易度が高いため、複数のコントロールを指標に手術手技を改善すべく、検討を進めている。
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