研究課題/領域番号 |
20H04506
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
安田 隆 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (80270883)
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研究分担者 |
廣瀬 伸一 福岡大学, 医学部, 教授 (60248515)
桂林 秀太郎 福岡大学, 薬学部, 教授 (50435145)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロデバイス / 微小孔 / 微小電極 / ニューロン / アストロサイト / 共培養 / 単一細胞解析 / 細胞外電位計測 |
研究実績の概要 |
半導体加工技術を利用して、SiN製多孔膜(一辺約300μm、厚さ約1μm、孔径約3μm)を底面に有するSi製マイクロウェルを16個×16個のマトリックス状にアレイ化し、これを培養用デバイスとした。また、単一ニューロン播種用デバイスとして、同様のマイクロウェル・アレイを形成し、その底面のSiN膜(一辺約150μm、厚さ約1μm)に単一の微小孔(直径約13μm)を形成した。培養用デバイスに凸部を、播種用デバイスに凹部を形成し、凸部と凹部をはめ込むようにして培養用デバイスの上に播種用デバイスを重ねることで、面内の位置合わせを実現するとともに、両デバイスのSiN膜間のギャップを約150μmになるように設定した。播種用デバイスの上部よりニューロンの細胞懸濁液を導入し、その各ウェル底面の単一微小孔を通じて、単一ニューロンを培養用デバイスの各ウェル底面上に落下させた。これにより、培養用デバイスの20%以上のウェル内に単一ニューロンを導入することが可能になり、単一ニューロン播種の成功率を従来の数%から大幅に向上させた。
さらに、Si基板で保持したSiN製自立膜(一辺約2.5mm、厚さ約1μm)を形成し、膜表面に白金黒製の微小電極(一辺約50μm)を4×4個のアレイ状に配置し、膜内に金製の配線を形成した。そして、電極と配線を避けるように、多数の微小孔(直径約6μm)を形成した。マウス大脳皮質アストロサイトを膜裏面に培養した後に、ヒトiPS細胞からグルタミン酸作動性ニューロンへの分化途中の細胞を膜表面(電極形成面)に播種し、共培養を開始した。分化誘導開始後約3週間でニューロンのスパイク状の細胞外電位が観測され、その後、培養日数の経過とともにスパイクの数と振幅が増大しニューロンが成熟する様子を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロウェル・アレイへの単一ニューロン培養系構築の歩留まりを向上させるニューロン播種方法の構築、微小電極を形成したSiN多孔膜上でiPS細胞からニューロンを分化誘導する技術の構築、微小電極によりiPS細胞由来ニューロンの細胞外電位を計測する技術の構築などにおいて、当初の目標としていた成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
微小孔アレイを有するSiN膜上で単一ニューロンを培養する技術を最適化するために、以下の研究を実施する。底面がSiN多孔膜により構成されるマイクロウェルを形成し、これをアレイ化した培養用デバイスを製作する。さらに、同様のマイクロウェル・アレイの底面のSiN膜に単一の微小孔を形成した播種用デバイスを製作する。培養用デバイスのSiN膜裏面に適切な密度でアストロサイトを培養した後に、播種用デバイスを培養用デバイスの上に重ね合わせる。その上からニューロン懸濁液を導入し、播種用デバイスの単一微小孔を通じて単一ニューロンを培養用デバイスのSiN膜表面に播種し、単一ニューロンとアストロサイトとの共培養系を形成する。マウス由来ニューロンで本手法の有効性を評価した後に、ヒトiPS細胞由来ニューロンを使用して評価を行う。そして、ニューロンとシナプスを免疫染色し、シナプス数等を計測することで、単一ニューロンの活性を定量的に評価する。
次に、微小孔アレイを有するSiN膜上の微小電極を用いて単一ニューロンの細胞外電位を計測する技術を構築するために、以下の研究を実施する。Si基板で保持したSiN製自立膜の表面に微小電極を形成し、SiN膜を貫通する微小孔を形成する。その際に、単一ニューロンが安定的に単一の微小電極上に留まるように、微小電極の形状、微小電極と微小孔の配置などを最適化する。SiN膜裏面に適切な密度でアストロサイトを培養した後に、微小電極上に単一ニューロンを播種する。微小電極上における培養状態の経時変化を顕微鏡観察により評価するとともに、微小電極により単一ニューロンの細胞外電位を計測する。この評価実験をマウス由来ニューロンにより行った後に、最終的にはヒトiPS細胞由来ニューロンを用いて本手法の有効性を実証する。
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