研究課題
初年度は、複数の疾患ヒトiPS細胞および健常者ヒトiPS細胞を用いて、脳オルガノイドの作製条件の検討を行った。脳オルガノイド作製課程の各段階でチェック項目を設定した。脳オルガノイド作製効率は、iPS株に依存する為、作製効率と作製後の免疫染色により、機能計測に用いるiPS株を同定した。脳オルガノイドの平面微小電極アレイ計測法を検討し、自発活動および薬剤応答を検出した。脳オルガノイドから検出される細胞外電位波形の解析法を検討し、特に、低周波成分に着目し、薬剤評価に有効なパラメータを導出した。痙攣を誘発するペンチレンテトラゾール投与においては、培養細胞では見られなかった急激かつ持続的な発火数の増大が用量依存的に観察された。培養細胞では観察されない現象であり、3次元構造を有する脳オルガノイド特有の現象であることがわかった。ただし、毎回観察されるわけではなく、作製されるオルガノイドに依存していることも明らかとなった。また、抗てんかん薬の効き方が、疾患脳オルガノイドの種類に依存して異なる現象をが検出された。神経伝達物質計測技術の開発では、カーボンナノチューブ微小電極アレイ表面に各種酵素を修飾することで、100nM以下のグルタミン酸を検出した。酵素を変更することで、GABAも検出できることがわかった。更に、細胞外電位と電気化学の同時計測により、マウス脳スライスの海馬領域から、活動電位とグルタミン酸放出の同時リアルタイム計測に成功した。
2: おおむね順調に進展している
健常および疾患脳オルガノイドの作製および微小電極アレイを用いた電気活動計測に成功し、疾患別の薬剤応答性の違いが検出されたこと、神経伝達物質計測においては、脳スライスを用いて、グルタミン酸放出と細胞外電位の同時計測に成功したことから、おおむね当初の計画通りに進んでいるといえる。
脳オルガノイドの作製効率を向上させる為の方法論の検討、GABA検出の為のカーボンナノチュール表面修飾の検討を行い、研究計画を実施する。
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Toxicological Sciences
巻: 179 ページ: 3-13
10.1093/toxsci/kfaa167
Nature communication
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