本研究の目的は、構築した3次元組織中の細胞の動態と機能を組織を生かしたままで連続的に見る、「3次元組織の動態・機能イメージング技術」を開発することである。すなわち、3次元ヒト心筋組織の成熟化刺激に対する動態・機能イメージング技術を開発し、その有効性を評価する。本研究を着実に遂行するため、3つの研究項目(①モレキュラービーコン(MB)の設計、②MBデリバリーの検討、および③3次元ヒト心筋組織に対する動態・機能イメージング)を設定した。今年度は、研究項目①および②を実施した。 研究項目①では、ヒトiPS細胞由来心筋細胞および間葉系細胞を機能的に特徴づけるmRNAを検出するMBを設計し、カチオン化ゼラチンナノ粒子を用いて単層細胞へ導入した。昨年度より、試験管レベルでは特異性の高かったMBが、細胞内レベルでは特異性が低くなるという問題が発生しており、配列の異なる複数種のMBを作製して問題点の解決を試みたが、現状では解決していない。特異性が低くなる要因が細胞にあるのかを検証するため、他の細胞を用いて、MBの特異性を確認した。 研究項目②では、カチオン化ゼラチンナノ粒子を用いて、細胞シートのMBデリバリー後の蛍光挙動を調べた。MB由来の蛍光強度は、時間経過とともに上昇した。これはMBの細胞内徐放により、標的mRNAと反応して蛍光発光するMBの数が増えたためと考えられる。 研究期間内に、研究項目③は実施できなかったが、引き続き3次元ヒト心筋組織に対する動態・機能イメージングを目指して研究を行う予定である。加えて、3次元ヒト心筋組織以外の3次元組織に対するMBデリバリーについても検討する予定である。
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