研究課題/領域番号 |
20H04520
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
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研究分担者 |
中村 友浩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30217872)
横山 奨 大阪工業大学, 工学部, 講師 (30760425)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織工学 / 培養骨格筋 / マイオカイン / IL-6 / 培養肉 |
研究実績の概要 |
近年、骨格筋の運動に伴って分泌されるマイオカインが注目されている。これまでに組織工学・再生医療技術を用い、長さ約15mm・直径約0.5mmと小さいながらも、電気刺激によって収縮運動可能な三次元培養骨格筋を作製し、さらに、培養骨格筋駆動部が交換でき、繰り返し屈伸運動できるデバイスを開発してきた。本研究はこの研究開発成果を活用することで、マイオカインを分泌させる培養骨格筋デバイスを開発し、最終的に動物に投与することでその効果を確認することまでを企図している。そのため、次の4つの課題を逐次的に検討している。すなわち、初年度(令和2年度)にマイオカインを分泌させるための培養骨格筋デバイスを作製し(課題1)、次年度(令和3年度)以降にデバイスを用いた細胞影響評価を行う(課題2)。そして最終年度(令和4年度)までに、マイオカイン同定ならびに至適分泌条件を確立するとともに(課題3)、開発したデバイスにてマイオカインを大量分泌させ、動物に投与してその効果を実際に観察・確認できるまで展開する(課題4)。 2年目である令和3年度は、課題2および課題3について、機械刺激によるマイオカイン分泌について検討した。種々の条件にて繰り返し検討した結果、2日間の連続刺激では収縮力は増加せず、収縮速度を変化させても同様であった。しかしながら、マイオカインの一種であるインターロイキン-6分泌量は有意に上昇していた。一方、1日3時間の連続刺激を2日間行ったところ、有意差は見られなかったものの収縮力は増加傾向にあった。しかし、マイオカイン分泌量は変化しなかった。これらのことから、収縮力とマイオカイン分泌量には明確な相関関係は見られないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、電気刺激に加えて機械刺激による収縮力ならびにマイオカイン分泌について様々な条件下で詳細に検討した。その結果、機械刺激によって収縮力が増加しても、マイオカインの一種であるインターロイキン-6の分泌量は影響しないことのあることがわかった。すなわち、機械刺激による収縮力の増加とマイオカインの分泌には明確な相関が認められないことが示唆された。他のマイオカインではどうかについて未検討ではあるものの、これまで明らかになっていなかった結果である。 また、マイオカインを効率的に測定ならびに収集するための方策として、新たに培養骨格筋周囲をゲル膜で被覆するというアイデアを思いつき、実証するための検討を開始した。このアイデアが有効あれば、本研究でのマイオカインを分泌させた培養骨格筋を高機能培養食肉として応用することも可能となり、本研究の新たな展開をもたらすものとなる。 これらの成果を複数の学会で発表し、論文投稿も行った。以上のこと、並びに令和2年度の進捗状況から勘案し、これまでの達成度はおおむね順調であると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は課題3に対し、機械刺激による収縮力の増加とマイオカインの分泌には明確な相関が認められないことが示唆された。令和4年度も引き続き、種々の条件下で収縮力とマイオカイン分泌の相関、ならびに分泌至適条件の確立について検討を続ける。 また、新たに培養骨格筋をゲル膜で被覆することで、マイオカインを効率よく留め置くことが可能であることが示唆されつつある。令和4年度は、この新たなアイデアの実現に注力し、課題4につなげていくことを計画している。さらに、ニワトリやブタなどから単離した初代筋芽細胞からの培養骨格筋作製も予定する。 最近、培養食肉が注目を集めている。現在、各企業等で開発されつつある培養食肉は“運動不足”のため、畜産肉に比べて味覚が劣り、マイオカインも少ない。本アイデアでは、マイオカインを培養筋肉内に留め置き、培養食肉の高機能化を図ることで、おいしくて健康に良い培養食肉にも展開が可能であると考える。
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