研究実績の概要 |
未だ、実用化されていない小口径人工血管の大動物移植モデルでの開存化を大目標とする。具体的戦略として、我々が世界で初めて報告した脱細胞化小口径血管(内径2mm、長さ30cm、Mahara et al., Biomaterials 2015)開発戦略である末梢循環細胞捕捉界面を、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製血管に搭載する。これまでの予備的検討の結果、PTFEの基本特性が脱細胞化血管と大きく異なることから、初期血栓形成の抑制戦略あるいは特異的細胞捕捉戦略の効率向上が重要なことが示唆されている。これらの要求事項に対応することで、研究期間中に、構築界面に対する血液反応の詳細を明確にするとともに、内径2~4mmの内腔修飾ePTFE製人工血管のミニブタ大腿動脈大腿動脈クロスオーバーバイパス術あるいはミニブタ同所性血管移植術での初期開存化を目指す。 PTFEは化学的安定性が高く、従来のプラズマ処理後のビニルモノマーグラフト重合法では表面処理が困難であった。そこでePTFE(多孔質構造)およびPTFEシートに対してArプラズマ処理後にグリシジルメタクリレート(GMA)をアンカー分子として導入することで、続けてメタクリル酸誘導体モノマーをグラフト重合し、我々が独自に見出した血栓形成抑制性と内膜誘導性を併せもつHCP-1ペプチド(特願2017-014800)を固定化した(Liu et al., Colloids Surf B, 2020)。得られた表面修飾ePTFEサンプルをin vitro HUVEC接着試験および血小板粘着試験、さらに、ミニブタ対外循環モデルによるIn situ 全血接触試験で、血小板粘着抑制と標的細胞捕捉を確認した(Liu et al. Biomaterial Sci. 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、学会発表などに大きな影響があった。しかしながら、REDVペプチド、あるいは、研究グループが独自に見出したHCP -1ペプチドを固定化しPTFE表面に対する、たんぱく吸着、血小板粘着、抗血栓性、標的細胞捕捉能について、in vitro および in situで評価しその成果を、(1) Y. Liu, M.C. Munisso, A. Mahara, Y. Kambe, and T. Yamaoka, Anti-platelet adhesion and in situ capture of circulating endothelial progenitor cells on ePTFE surface modified with poly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine) (PMPC) and hemocompatible peptide 1 (HCP-1) Colloids Surf B Biointerfaces, 193, 111113 (2020)、および、(2) Y. Liu, A. Mahara, Y. Kambe, Y. -I Hsu and T. Yamaoka, Endothelial cell adhesion and blood response to hemocompatible peptide 1 (HCP-1), REDV, and RGD peptide sequences with free N-terminal amino groups immobilized on a biomedical expanded polytetrafluorethylene surface, Biomater Sci, 9, 1034-1043 (2021) として報告することができた。さらに、HCP-1に関する特許の審査請求に有用なデータとすることができたので、概ね順調に進展していると評価した。
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