研究実績の概要 |
未だ、実用化されていない小口径人工血管の大動物移植モデルでの開存化を大目標とする。具体的戦略として、我々が世界で初めて報告した脱細胞化小口径血管開発戦略である末梢循環細胞捕捉界面を、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製血管に搭載する。これまでの予備的検討の結果、ePTFEの場合には、初期血栓形成のさらなる抑制と特異的細胞捕捉効率の向上が重要であることが示唆されている。 PTFEは化学的安定性が高く、従来のプラズマ処理後のビニルモノマーグラフト重合法では表面処理が困難であった。そこで2020年までにePTFE(多孔質構造)およびPTFEシートに対してArプラズマ処理後にグリシジルメタクリレート(GMA)をアンカー分子として導入することで、続けてメタクリル酸誘導体モノマーをグラフト重合し、我々が独自に見出した血栓形成抑制性と内膜誘導性を併せもつHCP-1ペプチド(特願2017-014800)を固定化した(Liu et al., Colloids Surf B, 2020)。得られた表面修飾ePTFEサンプルをin vitro HUVEC接着試験および血小板粘着試験、さらに、ミニブタ体外循環モデルによるIn situ 全血接触試験で、血小板粘着抑制と標的細胞捕捉を確認した(Liu et al. Biomaterial Sci. 2021)。R3年度には、さらに反応効率が高い戦略として、Arプラズマ処理後に生じるPTFE上の活性基を光反応性基を有する修飾分子と反応させる戦略を構築させることが出来た。構築した表面上への血小板粘着試験および細胞捕捉試験をin vitroおよびin situ(ミニブタ体外循環モデル)で評価した。未だ、HCP-1ペプチド固定化の効果は十分ではなく、さらなる反応条件の検討によりペプチド固定化密度の向上を計り、その効果をさらに検証する
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、学会発表などに大きな影響があった。特に、大動物実験の例数を重ねることが困難であり、in vitro研究中心の実験遂行を余儀なくされている。その中でも、PTFE(多孔質構造)およびPTFEシートに対してArプラズマ処理後にグリシジルメタクリレート(GMA)をアンカー分子として導入し、続けてメタクリル酸誘導体モノマーをグラフト重合し、我々が独自に見出した血栓形成抑制性と内膜誘導性を併せもつHCP-1ペプチド(特願2017-014800)を固定化することに成功した。R2-3年度には、さらに反応効率が高い戦略として、Arプラズマ処理後に生じるePTFE上の活性基を光反応性基を有する修飾分子と反応させる戦略を構築させることが出来た。ESCA 解析および顕微IR解析によると、その反応効率はこれまでのグリシジルメタクリレートアンカーに比較して飛躍的に向上しており、HCP-1ペプチドの直接固定化も可能と考えられるものであった。得られた表面修飾ePTFEサンプルをin vitro HUVEC接着試験および血小板粘着試験、さらに、ミニブタ対外循環モデルによるIn situ 全血接触試験で、血小板粘着抑制と標的細胞捕捉の検証を始めた。これらの成果は、Y. Liu et al., Colloids Surf B Biointerfaces, 193, 111113 (2020)、および、 Y. Liu et al., Biomater Sci, 9, 1034-1043 (2021) として報告した。
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