研究課題/領域番号 |
20H04527
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80631150)
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研究分担者 |
早川 清雄 日本医科大学, 医学部, 助教 (00368292)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん免疫 / マクロファージ / ポリロタキサン / シクロデキストリン / コレステロール |
研究実績の概要 |
がん免疫療法は臨床的に優れたがんの治療効果を示すものの、奏効率が30%程度と低いことが課題と考えられている。近年では、PD-1/PD-L1などの免疫回避機構以外にも、がん周辺環境が免疫回避にとって重要だと考えられている。本研究では、がん免疫の抑制やがん生育環境の構築を通じてがんの増殖に有利な環境を作ることに寄与している腫瘍随伴マクロファージ(TAM)に着目し、TAMの代謝に介入することで細胞機能のリプログラミングやがん免疫療法の治療効果増強が可能か検討する。本研究課題では、細胞内のコレステロール代謝に介入することが可能なシクロデキストリン含有ポリロタキサンを用いて、コレステロール代謝の調節とTAMの機能の変化について検討する。 2021年度の研究では前年度に合成法を確立したペプチド修飾ポリロタキサンの機能評価、および担癌モデルマウスをもちいた抗がん作用の評価を行った。オリゴエチレングリコールを化学修飾し水溶化したポリロタキサンを担癌モデルマウスに投与したが、高用量でも抗がん作用は確認されなかった。水溶性ポリロタキサンは高濃度でも細胞毒性を示さないというこれまでの知見と合致する結果である。同様に、細胞障害性を有するメチル化ポリロタキサンも抗がん作用は示さなかったが、がん細胞を標的とする機能分子を修飾することで、抗癌作用を示すことが明らかとなった。本結果は、がん組織に対する標的指向性をポリロタキサンに賦与する必要があることを示唆している。今後はTAMに対する標的指向性を賦与したポリロタキサンの機能評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ポリロタキサンへ特定細胞への標的指向性賦与する設計を確立するとともに、担癌モデルマウスの実験を開始することができたことよりおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究では、TAMに対するポリロタキサンの取り込み選択性を向上させるペプチドの選定と、コレステロール代謝への介入の影響について検討を行う。 具体的には、担癌モデルマウスを用いたTAMへの取り込みの解析と、ポリロタキサンと免疫チェックポイント阻害剤の併用によるがん免疫の増強について検討を行う計画である。また、ポリロタキサンによるマクロファージのコレステロール代謝変容ががん免疫に及ぼす影響についても培養マクロファージを用いたモデル実験系で検討を行う。
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