脳梗塞などで損傷した脳は再生しないと長く考えられていたが、近年、脳が持つ潜在的な再生能力を発揮させて治療するという概念が注目し始めてきた。申請者らは最近、脳の潜在的再生能力を発揮させるためのバイオマテリアルを開発し、脳梗塞7日後での脳内単回投与でマウス脳梗塞モデルの運動機能回復を担う材料開発にも成功した。しかしながら、発症1日後から7日後までに治療介入して、脳の再生を促す方法はほとんど知られていない。本研究では、発症1日後から7日後までに活性化する免疫反応を制御することで、神経血管再生や脳梗塞の機能回復を促進させることを目指す。具体的には、逆遺伝学の介入実験で重要性が証明されている抗炎症性サイトカインIL-10に着目し、IL-10を脳内で徐放させる超分子ペプチドを作製し、マウス脳梗塞モデルに投与して効果を検討する。2021年度は、従来知られている自己組織化でゲル化する超分子ペプチドよりも徐放効果の高いJigsaw-shaped self-assembling peptide(JigSAP)を作製し、IL-10のC末端にその超分子ペプチド配列を付加し、IL-10をゲルに取り込ませて徐放させる技術を確立した。また、IL10-JigSAPを投与する領域に関して、損傷脳皮質内投与、脳室内投与、髄腔内投与の3種類を検討し、精度よく投与できる実験系を確立した。さらに、in vitroでの炎症反応制御評価をするための培養系として、損傷脳皮質からミクログリア細胞を高純度で単離する系を確立した。
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