研究課題/領域番号 |
20H04529
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松元 亮 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (70436541)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボロン酸 / シアル酸 / がん幹細胞 / 低酸素環境 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ピリジル系ヘテロ環含有ボロン酸誘導体の一部が、従来知られる水準と比べて数十倍強力かつ選択的にシアル酸と結合し、さらに、この挙動は、腫瘍内低酸素環境に特徴的な弱酸性条件下においてのみ顕在化することを発見していた。この発見を基に、2020年度までに、5-boronopicolinic acid(5-BPA)をリガンドとする白金系製剤搭載型ポリマーミセルを調製し、がん幹細胞に対する標的性についても明らかにした。ボロン酸リガンドの重要な利点の一つに、シアリル化に依存する複数タイプのエピトープ(CSCの亜集団)を並列的に標的可能なことが挙げられる。抗体リガンドではこれらを独立に標的する必要があるが、2021年度は、5-BPAリガンドにより複数の膵臓CSC亜集団を同時にターゲティング可能なことをin vitroで実証し、論文発表を行った。同様のケミストリーを応用し、ポリエチレングリコール(PEG)のω末端にボロン酸を導入した分子を修飾した金電極を用いることで、がん、糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患を含む種々病態の血中マーカーであるfetuin(およびasialofetuin)を電位計測的に定量することに成功した。血中存在濃度を十分にカバーする100nMオーダーの検出感度を達成した。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーに導入することで、シアル酸特異的な細胞膜イメージング法を開発した。この技術を用いて、シアル酸の発現レベルを、タンパク質装飾した基板上のみならず、細胞表面で直接ヒートマッピングすることに成功した。しかも、脂質ラフト形成の可視化に必要なサブミクロンレベルの分解能を達成した。本成果は、生理学から病理学にいたるまで、シアル酸が関与するさまざまな糖鎖ダイナミクスを評価するための非侵襲的な手段となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年11月までに核酸疑似体との結合性評価とin vitroでの抗がん活性の評価を行い、令和4年3月までにin vitroでの膜融合機能の評価を行う予定であったが、その直前のタイミングで実験従事者が転職した。令和3年12月よりin vitroでの膜融合機能の評価を担当する研究協力者の雇用を予定したが、年度最終盤のタイミングということもありリクルート作業が難航したため、スケジュールに遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
新年度(2022年度)から雇用者を募るスケジュールへと変更することが人員の質 確保の観点から望ましいと判断されたため、該当する人件費を繰越し対応することとした。6月より新規研究従事者の雇用に目処が立っており、これにより、最終年度は当初予定の達成を目指す。
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