研究課題/領域番号 |
20H04531
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村上 義彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00339748)
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研究分担者 |
村上 智亮 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10728447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔質粒子 / 自己乳化 / エマルション |
研究実績の概要 |
高分子乳化剤(両親媒性ブロック共重合体。親水部:ポリエチレングリコール(PEG)、疎水部:ポリ乳酸(PLA)など)の組成、有機溶媒の種類などのさまざまな因子が、界面における高分子乳化剤の吸着挙動や分子運動性、界面張力の変化、界面揺らぎに影響を及ぼすことを明らかにした。特に注力した検討は、PEG-PLAを含有した有機溶媒と水との間の界面張力測定(ライジングドロップ法)による、PEG-PLA分子の界面における占有面積の導出である。その結果、PEG分子が9000程度まで大きくなるに従い、分子占有面積が小さくなり、9000以上になると逆に分子占有面積は大きくなることがわかった。この現象は、PEG分子量が油水界面におけるPEG-PLA分子のコンフォメーションに影響を及ぼしていると予測できる。PEG分子量が9000程度まででは、PEGに水分子が配位し、その水に対して他のPEG分子が近接する事で分子同士の凝集が生じ、分子占有面積が小さくなる。一方、PEG分子量が9000以上になると、PEG分子のもつ排除体積効果が強くなると予測でき、排除体積効果により分子同士が遠隔し、分子占有面積が大きくなると考えられる。界面における分子占有面積の変化は、油水界面に曲率を生み、この曲率の変化が自己乳化現象を与えたと予測できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子乳化剤の存在下で水と油を接触させるだけで自然に乳化が進行する「自己乳化現象」には未解明な点が多かったが、今年度の検討により、「高分子乳化剤によってなぜ自己乳化現象が生じるのか?」「高分子乳化剤によって生じる自己乳化現象を制御するための因子は何か?」という根本的な問いの解決につながる成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討によって、自己乳化現象に影響を及ぼすさまざまな因子が明らかになった。今後は、自己乳化現象を利用して材料内部に多孔質空間を構築する新しい方法論の構築に挑むとともに、得られた多孔質粒子のエアロゾル特性や治療特性を詳細に評価する予定である。
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